1カ月ぶりにGreenInnovationメールでお目にかかります、日経バイオテクONLINEアカデミック版編集長の河田孝雄です。

 先週土曜日(6月21日)に、茨城県つくば市の農業生物資源研究所で、遺伝子組み換えカイコを隔離飼育区画で飼育する実験計画について、地元住民も含めた一般向けの説明会が開催されました。

 この飼育試験は7月中旬からと、9月中旬からの2回行われ、それぞれ、緑色蛍光たんぱく質を含む絹糸を生産する遺伝子組み換えカイコを1万5000頭ずつ、飼育します。

 この実験計画については今年5月2日に、環境省や農林水産省の大臣承認を取得しました。今回の隔離飼育区画での飼育実験は、データを蓄積して、閉鎖系施設ではない一般的な養蚕農家の施設でも、組み換えカイコを飼育できるようにするのが狙いです。

 カイコを飼育するコストは、閉鎖系施設の場合に比べ、10分の1になるとのことです。裏を返せば、組み換えカイコを飼育するのに、閉鎖系施設を用いると、通常のカイコ飼育に比べて10倍を上回るコストがかかるということですよね。

 この説明会が行われた6月21日は、ちょうど群馬県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界文化遺産への登録が正式に決定するという記念日でした。

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[2014-6-23]
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[2014-5-29]
世界初の開放系での飼育を目指す組み換えカイコ、生物研が3万頭飼育の実験計画書を公表、6月21日に説明会
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[2014-3-7]
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[2014-2-7]
遺伝子組み換えカイコ、環境への拡散を防止せずに飼育する第一種使用等に前進【日経バイオテクONLINE Vol.2005】
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 組み換えカイコは、医薬品や診断薬・検査薬、化粧品の原料などを生産する目的では、閉鎖系施設における飼育の実用化が進んでいます。

 日本における養蚕業・製糸業の盛衰は、すさまじいの一言です。1959年の横浜開港から1941年の太平洋戦争開戦までのおよそ80年間は一貫して、日本における生糸の生産量と輸出量は増加しました。日本の生糸生産高は、1909年に中国を追い越して世界一になり、一時は日本の輸出の6割を占めました。太平洋戦争で激減した後、高度経済成長期は生糸生産量は全盛期の半分近くまで持ち直しましたが、ここ40年間衰退の一途をたどっています。

 世界恐慌が起こった1929年の全盛期では220万戸の農家が養蚕を行い、全農地の10%に相当する62万haが桑畑でした。今は(2011年の時点)、養蚕農家は群馬県を中心に600戸程度にまで減ってしまいました。

 詳しくは、農業生物資源研究所の遺伝子組換え研究推進室と広報室が作成・発行している冊子「カイコってすごい虫!」をぜひご覧ください。初版は08年で、現在の最新版は、2013年4月に改訂されたものです。

 富岡製糸場の世界文化遺産の登録は、カタール・ドーハで開催の国連教育科学文化機関(ユネスコ)第38回世界遺産員会で決定しました。日本の世界遺産登録は18件目で、近代の産業遺産は、富岡製糸場が初めてです。

 富岡製糸場は1872年に明治政府が建設した日本初の器械製糸場で、1893年に民間に払い下げられた後、1987年まで操業を続けました。富岡製糸場は、明治政府が設立した官営工場のうち、建設当時のままの姿で保存されている唯一の工場とのことです。建築物としての価値と、日本の近代化を支えた歴史的な意義から、07年1月に世界遺産の暫定リストに加えられていました。

 カイコ・絹は、ものづくりだけでなく日本の大切な文化の源です。JR東日本が発行うしている冊子トランヴェールの2014年6月号では、絹を20ページ以上にわたって特集しています。「山形発! Japanese Silk 新時代」という見出しです。

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