フレンチオープンも激闘の色合いを深めて参りました。第四シードであるフェデラー選手がラドビアのゴルビス選手にフルセットの末敗れてしまいました。スウェーデンのレジェンド、エドベリ選手をコーチに加え、ネットプレイを強化して、ナダル対策を万全に備えたフェデラー選手も唖然とする結果であったと思います。しかし、25歳のゴルビス選手は若い段階から注目株でありましたが、最近は不遇の時代を過ごしておりました。しかし、近年、フォアハンドの強化とメンタルの強化に成功、200km/hを簡単に超える強烈なサービスと鋭いバックハンドによって、フェデラー選手を粉砕してしまいました。バウンドしてから急速が遅くなるレッド・クレーのコートであれだけサービスエースを決められるゴルビス選手は準決勝以上の台風の目となることは間違いないでしょう。

 さて、皆さん、もう6月17日のセミナーにお申し込みになりましたか? そろそろ冗談ではなく、席の心配をしなくてはならないタイミングです。今後のバイオテクノロジーの新しい時代を切り開くのが、シングルセルバイオロジー(SCB)です。この技術突破はあらゆる生命科学に変革をもたらしますが、当面は抗がん剤の開発、特にがん幹細胞の開発と再生医療の細胞の品質管理に貢献すると考えます。そこで是非とも、6月17日に予定しているSCBのセミナーに皆さんを勧誘したいと思います。がん研究や幹細胞研究の最大のボトルネックは、がん組織や幹細胞とそのニッチを構成する細胞群のダイナミックな多様性にあります。細胞は相互に行きつ戻りつしながら、細胞の運命を変えています。今までは、こうした多様な細胞群をすりつぶした平均値としてバイオテクノロジーは進んできましたが、今や個々の細胞群の動的な解析が不可欠となって参りました。この技術革新を見逃すと、将来のビジネスに禍根を残すことになると思います。今回は国内外からSCBを開発、あるいは実際の生命科学の研究に応用している最先端の研究者を招き、皆さんの目前でSCBによってバイオ研究やバイオビジネスがどう変貌するかをお見せしたいと望んでおります。幸い有力な演者の召集に成功いたしました。今回は再生医療とがん研究に的を絞り、SCBの具体的な最新の成果を議論したいと思います。どうぞ下記のサイトより詳細にアクセスの上、お申し込みをお急ぎ願います。
 開催日時と場所は、6月17日(火) 12:25~17:45(12:00開場)会場秋葉原コンベンションホールです。
http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/140617/mail.html
 このメールを受信している読者は割引値段で上記から参加登録可能です。どうぞ宜しく願います。

 2014年5月23日に成立した独立行政法人日本医療研究開発機構(日本版NIH)が、間違いなくわが国のトランスレーショナル研究と、そして将来は基礎研究そのものを変えることが判明しました。明治以来、わが国は科学技術研究を支援して参りましたが、初めてその研究成果をチェックし、研究プログラムを改善し、実行する、そしてその成果をチェックし、改善するというPDCAサイクル(Plan Do Check Action)を、今回の日本版NIHが立ち上がることによって、国の研究開発に導入することが決まったのです。今まで、一生懸命競争的資金の申請だけを行えば良かった国の研究プログラムに関して、少なくとも医療イノベーションに関しては、PDCAサイクル導入により、厳しく結果が問われることになります。企業ではもうPDCAサイクルは当たり前ですが、今まで結果が問われてこなかったわが国のアカデミアにとっては驚天動地のことが起こるのです。当面はトランスレーショナル研究が対象ですが、日本版NIHが基礎のシーズから実用化まで一貫して支援、予算の執行管理を行うことを唄っている以上、近い将来、基礎研究においてもPDCAサイクルの導入は、政治的に重要な課題となるでしょう。
 もう皆さん、厚生科研費が当たったと喜んでいる時代は終わったのです。これからは成果が厳しく問われる新しい時代に突入したと覚悟しなくてはなりません。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/suisin/dai3/siryou2.pdf

 通常ではここから有料ですが、月初めの月曜日だけは全文無料でお読みになれます。過去記事は下記のWMの憂鬱Premiuサイトから有料でお読み願います(有料、月間500円で100本まで読み放題)。以前に配信したメールもまとめてお読みいただけます。どうぞ下記よりご登録願います。
https://bio.nikkeibp.co.jp/wm/

 日本版NIHに政府与党が仕込んだ毒を指摘したのは、わが国の某有力官庁の課長です。先週、有力な業界団体の講演会での発言でした。私は今回の日本版NIHの創設をこれまた明治以来の慣習を打破する省庁縦割りの予算業務を、文科省、厚労省、経産省の一部の予算ではありますが、医療イノベーション関連の1400億円(2014年度、前年比20%増加)を一元管理する新しい枠組みとして評価していました。但し、ただでさえ医療イノベーションの実現には10年以上の時間と粘り強い支援が必要であるため、時の政権によるころころ変わる政治的な圧力に理論的に抵抗しえるビジョンを形成するための頭脳集団が必要であるとだけ思っていました。

 某有力官庁の課長によれば、日本版NIHはPDCAサイクルを廻し、医療イノベーションを実現する機関であり、極めて簡単に言うと、「今までアカデミアが言い訳にしてきた知の創造だけではこの予算は許しません。ちゃんと国民を健康にしなさい」という予算執行管理を行うということです。実際、日本版NIHを管轄する内閣府は医療イノベーションの実現目標を、臨床試験何件とか数値目標としてお約束しております。これを当初のプランのゴールとして今年度から予算執行管理に鞭が入れられます。理研のSTAP細胞を取り巻く研究のようないい加減な研究はもはや許されないのです。

 またもう1つの特徴は、日本版NIHによって3省の予算が一元管理されるため、徹底的な重複排除が行われるということです。今まで少し名前を変え、文科省と厚労省の予算を獲得する猛者もおりました。また、厚労省の補助金で落選し、文科省で採択されるということも数多くあったのですが、もし日本版NIHが機能するようになれば、多少、メンバーを入れ替えたり、表現を変えたりするだけで他の予算を獲得することはあり得ない。つまり、敗者復活戦は無くなるということです。

 今年、そして来年の日本版NIHの予算管理と執行で、アカデミアや医療関係者は思い知るようになるでしょうが、もし、日本版NIHの理事長の才覚が欠けた場合は、これはもう堅苦しい官僚的な予算執行・管理となる可能性は大きいのです。今はキラキラと輝く日本版NIHですが、リーダーシップとビジョンに乏しい理事長が運営するならば、本当に官僚的なギスギスした予算執行となることは必然です。加えて折悪しく、ディオバンのデータ操作事件とSTAP細胞騒動がきっかけとなり、日本版NIHに研究不正や利益相反(COI)の管理という機能も追加されました。今まで、結果を問わない政府の予算管理でいわば天国のような心地よい環境を楽しんで来たアカデミアや医療研究者にとっては、茨の道がこのままでは用意されることになると思います。どうやって創造性を活かし、しかし、国民の負託に応える結果を出せる柔軟な運営を行うか?日本版NIHが解かなくてはならない宿題は極めて大きいと考えます。理事長の人事だけでなく、どうやってPDCAを官僚的ではなく、柔軟に実現するか? それを支援するチームを組織内外に設置する必要があると考えます。

 但し、現在の医療イノベーション一元化予算の執行段階の話し合いの噂を聞く限り、3省の文化の差により、激論が交わされているようです。言葉も異なるし、やり方も違う、まるで明治維新直前の薩長土肥の会議のようですが、これはとことん喧嘩をしても、相互理解に到達する必要があります。何しろ、日本版NIHは来年創設されますが、来年度移行も予算申請は各省が行うという明治以来の不文律がまだ生きております。加えて、この3者以外に、あたかも朝廷のように内閣府が日本版NIHの調停役となって、混迷を深めております。いい加減、四角四面の議論ではなく、国民の健康寿命の延伸という重要な目標の下に、一致団結すべきであると考えます。

 かろうじて、幸い昨年の夏から年末にかけてのぎりぎりの交渉で科学研究費補助金(650億円)は日本版NIHの範疇外に置かれることになり、現在では研究成果は知の創造という抽象的なものでも許される予算となっております。また、厚労省は国立がん研究センターなどナショナルセンターのインハウス研究費(750億円)を日本版NIHの外に置くことに成功しています。つまり日本版NIH以外に医療イノベーション(シーズから実用化)の実現に関わる予算はもう1400億円存在しているのです。このいわば、成果を問われない予算の行く末はどうなるのか?

 間違いなく、日本版NIHの次の目標はナショナルセンターの取り込みです。数年以内にはナショナルセンターを取り込み、研究能力を備えた、ある意味、真の日本版NIHを誕生させることを考えている官僚や政治家も存在していると推察します。そして、基礎から実用化まで一貫してシームレスに医療イノベーションを支援することが日本版NIHの目的であると掲げた以上、時間が経過するにつれて、基礎研究が無関係であると切り離すことは不可能であるという認識が深まるにつれて、PDCAの罠から基礎研究を排除することができなくなると私は懸念しています。

 やがて総ての生命科学研究がPDCAサイクルの中で評価されるようになる。
 しかし、これで本当に創造的な生命科学が可能なのか?国民の血税を投入する研究である以上、成果のチェックと研究の公正性を担保する必要はあると私は思います。しかし、そんなにギスギスした、そして短期的な成果が担保されたような生命科学研究では、本当の意味での創造的な基礎研究は実現できないと思います。この矛盾を解決するには、国税以外の研究資金を確保する必要があるのです。欧米のようなNGO資金の確保がどうしても必要となるのです。

 天は自ら助ける者を助ける。生命科学にも自助の精神が不可欠です。そのためには、当然ですが財務省は科学研究に関する寄付の減税枠を拡大しなくてはなりません。

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 今週もどうぞお元気で。

            日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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