少し時間が経ってしまいましたが、4月22日に日東電工が、siRNA肝硬変治療薬の米国でのフェーズIを完了したと発表しました。これは札幌医科大学の新津洋司郎特任教授と共同で開発を進めている「ND L02-S0201」と呼ばれている製剤で、熱ショックたんぱく質(HSP)47遺伝子を阻害するsiRNAをビタミンAを結合したリポソームを用いて送達するものです。HSP47はコラーゲンに特異的なシャペロンであり、この抑制により繊維化の進展を防止します。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140422/175596/

 抗体に続く次世代の医薬品として期待されている核酸医薬ですが、基礎研究分野では世界でトップレベルにあるにも関わらず、開発の面では欧米に先行を許しているといういつもの台詞が、この分野でも言われています。しかし、これまで全世界で承認された核酸医薬品は眼科領域の2つに加えて、昨年米国で発売された家族性高コレステロール血症対象のKynamroのみ。日本勢の追い込みが期待されます。

 そのために重要なのは、なんと言っても開発・承認に関するガイドラインの制定でしょう。開発に際して参照すべき核酸医薬品に特化したガイドラインは、米国やEUにも存在せず、ICHのガイドラインにも核酸医薬に特化したものはありません。日本が先頭に立ってガイドラインの整備を進めていくことが、競争力強化という点でも求められています。いわゆる改正薬事法によって再生医療の開発が国内回帰したようなことが、核酸医薬の分野でも起こるのではないでしょうか。

 ということもあり、ヒューマンサイエンス新興財団が3月に公表した100ページを超える詳細なレポート、「平成25年度規制動向調査報告書 核酸医薬品の開発と規制の動向」を読んでいます。そして日本からガイドラインを発信するような取り組みがあってもいいのではないかという視点は、このレポートの受け売りです。レポートでは「核酸医薬品の開発に係るガイドライン等の整備にあたっては、国・産業界・アカデミアは、国民の利益享受と健康福祉を最優先しつつ、グローバルな協調のもとで、イニシアティブ発揮と機敏な施策の推進を」と提言しています。
http://www.jhsf.or.jp/paper/report/report_no82.pdf

 ガイドラインの必要性に関して受け売りを続けますと、核酸医薬品は既存の低分子医薬品と異なる数々の特性を有しており、例えばCMCという点では特有の純度、不均一性(類縁体や異性体など)や構造上の課題(1本鎖、2本鎖など)、化学修飾の問題などがあり、複雑な類縁体や異性体の分離・除去が困難で、低分子医薬品のガイドラインで求められている事項への対応には技術的に不可能な点もあることが指摘されています。

 また、有効性という点でも、動物での薬効をサロゲート配列で評価する必要性や、遺伝子発現抑制を評価するマーカー開発の重要性、核酸そのものの毒性の評価などが課題として挙げられています。

 レポートでは「国、アカデミア、産業界は、核酸医薬の実用化促進のための、レギュラトリーサイエンスに立脚した核酸医薬研究会組織の整備と活気ある展開を」とも提言しています。

 ところで日経バイオテクは昨年9月に、核酸創薬イノベーションと題したセミナーを開催し、多くの方に参加いただきました。
http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/130924/

 今年も同様のセミナーを開催しようと考えており、現在、企画立案中です。はい、今回のメールは、そのリサーチの一環でした。

                      日経バイオテク編集長 関本克宏

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https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/