H7N9型鳥インフルエンザウイルス、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、H5N1型鳥インフルエンザウイルス…。感染症の専門家が、国内で感染例が出てくるのではないかと懸念する新興感染症は数多い。つい先日はWHOが、ポリオ(急性灰白髄炎)感染が世界に広がる恐れがあるとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)を宣言した。

 中でもMERSに関しては、じわじわと世界各国で感染例が報告されつつある。英国やイタリア、フランスに加え、2014年4月にはマレーシアで、2014年5月には米国で初の感染例が見つかった。感染例は、中東への渡航歴があったり、中東からの旅行者だったりするようだ。いずれもヒト-ヒト感染が拡大するような事態には発展せず、単発の報告に留まっているものの、今年4月には相当数の報告例が蓄積され、世界的な流行が懸念されている。

 そんな中、米国のベンチャー企業が相次いでMERSに対する新薬候補の開発状況を発表。新薬候補の作用メカニズムはインターフェロンαで宿主の免疫を底上げしたり、独自の基盤技術を用いてウイルスの外被たんぱく質を取り去ってウイルスを破壊するといったものだ。安全性や使用経験という意味では前者が、抗ウイルス効果という意味では後者が注目される。

米ベンチャー企業、MERSの新薬候補が相次ぎ動物実験段階へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140507/175903/

 新興感染症と言えば、日本では一部の専門家がリスクを指摘したH5N1型鳥インフルエンザウイルスに対してだけ、国民全員分のワクチンを早期に確保するという事業などが大々的に進められたものの、MERSに対するワクチンや新薬開発までは手が回っていないのが実情だ。もちろんどこかで何かが開発されている可能性もあるが、日本の研究機関やベンチャー企業から、こうした発表が聞こえてこないのは寂しい限りだ。