厚生労働省は2014年4月15日、新型インフルエンザの発生に備えて省内の初動対応を確認する訓練を実施しました。昨年から中国では、H7N9型のヒトへの感染が続いており、それを受けて計画されたものだということです。新型インフルエンザに関しては、従来からH5N1型のヒトへの順化を懸念する声もあります。訓練すれば大丈夫という訳ではないでしょうが、2009年に新型インフルエンザのパンデミックが起きた時の省内の混乱を振り返ると、訓練するに越したことはないだろうと思います。

 同じ話が、パンデミックに備えて開発された新型インフルエンザウイルスH5N1ワクチンや、プロトタイプワクチンにも言えるのではないでしょうか。先日来、細胞培養で生産するH5N1ワクチンを取材してきましたが、有効性の評価への疑問とは別に、「果たしてこれらのワクチンはどの程度フィージブルなのか」という疑問が拭いきれませんでした。どのようなウイルス株が感染拡大するかは分からないものの、ワクチンを生産し、流通させ、接種するに至るまでには、数多くの障害があるからです。

 接種のところだけ考えても、複数の障害がありそうです。例えば、防腐剤。2013年度末に出揃った細胞培養のH5N1ワクチンの中には、チメロサールなどの防腐剤が入っていない品目があります。防腐剤が入っていないので、1本分(10接種分)を相当の短時間で接種する必要があるわけですが、実際にそれは可能なのかという疑問が生じます。もっとも新型インフルエンザ対策行動計画には、集団接種と書かれているので、防腐剤についてはそう心配する必要もないのかもしれませんが。

 他にも、投与量。先述のワクチンの中には、1品目だけ投与量が1mL(他は0.5mL)のものがありますが、間違えずに接種できるだろうかという疑問も出てきます。接種に当たる現場の医師は、品目による詳細な違いについてまで、知らない可能性があるからです。国内では数年前、成人用として承認されていた肺炎球菌ワクチンを、小児に対して接種する事例が頻発し、アラートが出たことがありました。肺炎球菌ワクチンの適応について医師が正確に認知していなかったためです。混乱する現場で「どのワクチンも0.5mLだと思ってた」という医師が出ないとも限りません。混乱を防ぐには1カ所に1品目しか流通させないようにする、といった対策を講じる必要があるかもしれません。

 というわけで、ワクチンについても、訓練するに越したことはなさそうです。