3月27日に公表された「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会」、いわゆるディオバン問題検討委員会の報告書にあわせて、2つの指針が提示されました。日本製薬工業協会(製薬協)の「製薬企業による臨床研究支援のあり方に関する基本的な考え方」と日本学術会議の「我が国の研究者主導臨床試験に係る問題点と今後の対応策」です。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000041942.pdf
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-t140327.pdf

 より実務的な指針である製薬協の方は、まず臨床研究への支援のあり方に関する基本的な考え方として、「自社医薬品に関係する臨床研究に対する資金提供や物品に供与等の支援は、契約により実施すること」としています。また、奨学寄付金の提供のあり方として、「奨学寄付金は本来の趣旨に則り適切に提供することとし、今後自社医薬品に関係する臨床研究に対する資金提供の支援方法としては用いないこと」としました。今後は医師主導の臨床試験への支援が精査されることになり、医局、さらには学会運営への影響は少なくないと思われます。

 一方、理念にまで踏み込んだ日本学術会議の研究者主導臨床試験のあり方にかかわる提言には、厳しい言葉が並びました。現状および問題点として、「バルサルタン臨床研究事案では、同種同効の降圧薬が多い中での製薬企業の販売促進策の一環として、不当な役務及び資金提供がなされる中で大規模臨床試験が行われた。そこでは、研究者における臨床試験のあり方に対する基本認識の欠如、倫理観及び科学的な動機付けの乏しさ、さらには研究者主導臨床試験における管理体制の未整備などにより、企業の不当な介入を許した結果、研究不正を発生させ、国際誌からの複数論文の撤回という事態に陥った」

 その上で、日本学術会議は以下の提言をしています。
・研究者主導臨床試験に携わる者の倫理性の維持向上
・医療施設・機関等による臨床研究管理センターの整備
・研究者主導臨床試験の実施に係るガイドラインの策定
・生命科学研究に係る研究倫理教育の徹底
・国による臨床研究推進部門の設置

 最後の臨床研究推進部門は、製薬企業等からの資金を原資とした研究について研究代表者を公募し選考助成する公的機関(例えばPMDA内に整備)を想定し、さらに研究データの信頼性を保証するために米国の研究公正局(ORI)の機能を想定した部門をこれから発足する日本医療研究開発機構(仮称)の中に置くとしています。

 主役のディオバン問題検討委員会も、臨床研究の質や研究者の利益相反管理、研究支援に係る製薬企業の透明性確保などを担保するための法制度等を、今年秋をめどに検討を進めることを提案しました。3月11日に公表された米国研究製薬工業協会(PhRMA)の意見書、「医師主導型研究に対する製薬会社による支援の規則に関するPhRMA原則」も合せると、今後の医師・研究者主導型研究に対する規制の方向が明確に見えてきます。つまりみんな同じことを言っているわけです。
http://www.phrma-jp.org/archives/pdf/140311_IIS_Jap.pdf

 さて、規制は固まりました。そして検討会の報告書、「高血圧治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について」の以下の文章を読んだときに頭に浮かんだのは、理化学研究所の野依理事長の苦渋の表情だったのでした。

 臨床研究を行う全ての者は、今回の事案を他山の石とし、自らが臨床研究を志した初心を思い返し、また科学者としての良心に従って臨床研究を行うとともに、自らの研究を通じて患者によりよい治療手段を提供するという本来の目的を自覚しながら臨床研究にあたるべきである。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000041943.pdf

                     日経バイオテク編集長 関本克宏

ご意見、ご批判は以下のフォームよりお願いします。
https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/