こんにちは。1週おきにこのメールを担当しております、日経バイオテク記者の増田智子です。3月も間もなく終わり、来週には新年度が始まります。入学式に参加される方も多いのではないでしょうか。飲酒事故や悪質商法、カルト宗教団体への勧誘に新入生が巻き込まれないように、各大学は入学手続きや入学式などで啓発活動をしているそうです。

 詐欺などの被害にあわない用心はどの年齢層にとっても重要です。最近、大学、企業を問わず、論文発表を考えている研究者は、悪質な学術出版社に関わりを持たないように注意しなければならないようです。

 過去数年で学術出版のオープンアクセス化が進み、さまざまな新しい雑誌が創刊されています。オープンアクセス(購読料を支払わなくても誰でも読める)の論文誌の運営システムはさまざまです。例えば国の機関や大学、学会が運営費を負担したり、書籍・広告の売り上げ、寄付金などを運営費に充てることで、無料公開を維持しているところもあります。

 今回のメインは、著者が手数料を支払って論文を発表するシステムを取るオープンアクセス雑誌です。恐らく最も有名なのはPLOS ONE誌で、日本の研究者の間でも、特に「取り急ぎ発表したい」というときの選択肢として定着した感があります。ただ、著者が費用を負担するオープンアクセス論文誌の中には、対価のみを目当てにしており、厳格な査読など学術誌としての機能に疑問があるものもあるようです。米University of Colorado Denverの学術司書であるJeffrey Beall准教授が2014年1月に発表した「捕食性学術出版社リスト2014(http://scholarlyoa.com/2014/01/02/list-of-predatory-publishers-2014/)」には477もの「学術出版社」がリストアップされています。2012年、2013年と、同リストに挙がった出版社の数は大幅に増加しています。

 また欧州では、規模は小さいが実績のある複数の雑誌が捕食性学術出版の「なりすまし」の標的となっており、紛らわしい名称やアドレス、美しいホームページに誘導されて論文を投稿してしまう、という被害が出ている模様です。日本には歴史のある雑誌が多く、英語で情報発信するようにもなっているので、乗っ取られないように注意したほうがよさそうです。

  同リストに掲載されている出版社のウェブサイトには、インパクトファクターが表示されているものもありますが、信じる前に一呼吸置いたほうがいいかもしれません。インパクトファクターは初夏に前年の値が出版される、というスケジュールであるため、例えば2014年初に2013年のインパクトファクターの値が出ているのは変です。創刊から1年しかたっていない雑誌のインパクトファクターが表示されているのも怪しいです。

 Beall准教授の調査によると、この他にも、オープンアクセスを謳っている論文誌で投稿者には「論文は無償で世界中に公開する」と言っているのに実際は読者に課金していたり、さらには著者に論文の著作権を譲渡するよう求める出版社もあるそうです。新しい投稿先に論文を出す際には、念のため、事前の調査をする必要がありそうです。

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                      日経バイオテク 増田智子