2014年2月28日に開かれた、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会で、細胞培養インフルエンザワクチン2品目が新たに承認される見込みとなりました。化学及血清療法研究所の乳濁細胞培養インフルエンザHAワクチンH5N1筋注用「化血研」と、北里第一三共ワクチンの沈降細胞培養インフルエンザワクチンH5N1筋注「北里第一三共」です。

 (訂正)当初の記事で、「化血研は半年間で2500万人分のワクチンを供給できる体制を構築することが課せられていました」との表記ありましたが、化血研に課せられていたのは4000万人分でした。お詫びして訂正いたします。

厚労省第二部会、H5N1インフルワクチン2品目など承認了承
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140303/174490/

北里第一三共のインフルワクチンH5N1、2種の用量了承で注視される製造能力
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140303/174492/

 いずれも、2011年8月に厚労省の「新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備事業」の「細胞培養法ワクチン実生産施設整備等推進事業」に採択され、多額の助成金を受けて生産体制の確立や臨床開発が進められてきた品目。助成を受ける条件として、2014年3月末までに、化血研にも北里第一三共ワクチンにも、半年間で4000万人分のワクチンを、供給できる体制を構築することが課せられていました。

 しかし部会から1週間後の2014年3月7日、北里第一三共ワクチンは、現時点では半年間で4000万人分のワクチンを供給することができないと明らかにしたのです。実生産設備で検証したところ、ワクチンの精製工程の収率が思った以上に悪く、当初の計画に届かなかったためとのこと。

北里第一三共、インフルワクチンH5N1の供給力が厚労省要請に届かず
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140307/174615/

 実は北里第一三共ワクチンは、1回当たりの投与量である1mLに含まれるHAたんぱく量として、30μg/mLと60μg/mLの2種類を申請していました。厚労省は、いずれも承認し、「ウイルスの強さや流行状況で使い分ける」方針だといいます。北里第一三共ワクチンによれば、今の収率だと、供給力は30μg/mLであっても半年間で2000万人分。結果、大幅な供給力不足という問題が表面化しました。

 加えて懸念されるのは、30μg/mLのワクチンの有効性です。同様のワクチンとしては、既に承認されている細胞培養インフルエンザワクチンH5N1「バクスター」と同「タケダ」、今回部会を通過した化血研のの乳濁細胞培養インフルエンザHAワクチンH5N1筋注用「化血研」があるものの、投与1回当たりのHAたんぱく量はいずれも1種類。北里第一三共ワクチンのものだけ2種類の用量で認められるのは、(ヒトに対して)低病原性のウイルスが流行したら30μg/mLでどうにかなるものの、高病原性のウイルスの場合は30μg/mLではどうにもならない可能性があるからと解釈できるでしょう。

 しかし、現在の収率では、60μg/mLを使うとなれば供給できるのは半年間で1000万人分。厚労省も、有効性だけから見れば60μg/mLだけを承認したいところなのかもしれませんが、安全保障という観点から供給力も無視するわけにはいかず、苦肉の策で30μg/mLと60μg/mLという2種類の用量を承認することにしたとみえます。

 細胞培養法ワクチン実生産施設整備等推進事業では、北里第一三共ワクチンと全く同じ培養細胞(MDCK細胞)とアジュバント(水酸化アルミニウム)を選択して開発を進めていた阪大微生物病研究会が2012年11月、撤退を発表しています。同社は投与1回当たりのHAたんぱく量として7.5μg/dose、15μg/dose、30μg/doseを設定し治験を実施したものの、いずれの投与量でも有効性が得られなかったと、その理由を説明。さらなる高用量を設定するには、製造設備の増強が必要になり、そこまでの投資はできないと判断した結果でした。

 北里第一三共ワクチンも、当初は30μg/mLのワクチンを開発し、4000万人分を供給する計画だったようなので、60μg/mLのワクチンが必要となる高病原性のウイルスに対しては結局、当初の想定より倍のHAたんぱく量が必要になったわけです。そして、今のところ供給できるのは1000万人分で、当初計画の4分の1…。

 2011年の細胞培養法ワクチン実生産施設整備等推進事業の採択時、UMNファーマ(秋田市)とノバルティスファーマの2社が選考から漏れたことが判明していますが、阪大微研の撤退や北里第一三共ワクチンの今回の事態に、あの採択は何だったのかと首を傾げずにはいられません。