バイオ研究向けのプレプリントサーバーが立ち上がる【日経バイオテクONLINE Vol.2015】

(2014.02.26 18:00)
増田智子

 こんにちは。1週おきにこのメールを担当しております、日経バイオテク記者の増田智子です。

 学術論文のピアレビューシステムに対する信頼性を揺るがす事例が相次いで生じました。同じ分野の専門家が研究成果を吟味するピアレビューシステムですが、時間がかかりすぎるとか、アイディアがライバルでもあるレビュアーに筒抜けになっているのでは、などの批判は以前からありました。審査をされる側である研究者は、「毎度のことだが英語が間違っている」という皮肉っぽいコメントや、「レビュアーが見つからず審査に時間がかかった」等の言い訳、最初は「掲載してもいいと思う」という意見だったレビュアーが修正を重ねさせた挙句「気が変わった」、といった悲哀を味わっているようです。

 とはいえ、論文を発表しないと、研究成果を広く世に知らしめることができないため、これは避けがたい試練と見なされています。文句の一方でピアレビューの利点は大きく、同分野の研究者の適切な意見を反映させれば、論文のレベルは確実に上がります。それにしても、早めに他の研究者の意見を聞き、ブラッシュアップした上で、査読付きのインパクトファクターの高い雑誌に論文を発表できればどんなにいいでしょうか。科学の進歩に対するメリットは少なくないはずです。

 バイオ分野の研究者よりも気が短い物理学者は、20年以上前にプレプリントサーバーという仕組みを立ち上げて、正式発表前の論文について意見交換をする場を設けていました。arXiv(読み方は「アーカイブ」 http://arxiv.org/)というものです。このバイオ版が2013年11月に公開されました。運営母体は米Cold Spring Harbor Laboratoryで、名前はbioRxiv(同「バイオアーカイブ」http://biorxiv.org/)。

 レビューがないとはいえ、非科学的だったり、他人を中傷する内容の論文は公開できません。盗用があったり、倫理的に問題がある動物実験・ヒト試験を実施している場合には削除されます。投稿者はいつでも、論文の内容を改変することができ、改変の履歴は公開されます。Nature Publishingなど主要な学術論文出版社は、プレプリントサーバーでの公開については「発表」と見なさないというルールを設けているため、ここで改良した論文を投稿することが可能です。

 このサイトで公開されている論文数は、この原稿を執筆している2月25日の時点で214本と、まだ少なく、各論文についているコメントの数も多くはありません。先行するarXivが成功しており、物理学の教科書を書き換えるような重大な成果も発表前に公開されるようになっているため、bioRxivもそういったプラットフォームになることが期待されているようです。私は、何かニュースになるような面白いものが出ていないかな、と思いながら閲覧しています。

ご意見、ご批判は以下のフォームよりお願いします。
https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/
                        日経バイオテク 増田智子

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