今年も年末から正月三が日を湘南海岸で過ごしました。2014年の初日の出は6時51分に太平洋から上がりました。丁度、水平線の上に小さな眉のような雲がたなびき、真っ赤な丸い太陽が顔を出した15分後には雲に一時隠れました。しかし、その後は晴れ渡った青空に黄金色の日の出となりました。今年はなんとかデフレ脱却の年にしたいのですが、この日の出を見る限り、4月の消費増税で少し景気は停滞するものの、何とか、今年の後半には景気も盛り返すかもしれないと予感いたします。そしてその鍵を握るのは、イノベーションによる新産業や新規雇用の創造です。そして間違いなく、そのイノベーションのど真ん中に今年もあるのが、バイオテクノロジーなのです。今年こそ皆さんの一層のご奮闘により、わが国のバイオが力強く成長することを期待しております。昨年末12月24日には、小野薬品工業が抗PD-1抗体(ニモルマブ)の製造販売申請を、世界に先駆けてわが国で行いました。京都大学との産学連係によって実用化した画期的な抗体医薬です。世界市場で2000億円以上のピーク売り上げが期待できます。そして、反個の医療の旗手として、分子標的薬開発の次の抗がん剤開発の新しいビジネスモデル免疫チェックポイント阻害剤(あるいは抑制性免疫解除薬)を切り開いていく新薬です。わが国のバイオの底力を証明する端緒となりました。

 先ほど、薬事法違反で厚労省がノバルティス社を告発したという発表のメールが参りました。今年も年明け早々、波乱含みの年となりそうです。昨日、内閣官房・健康・医療戦略室の日本版NIHの担当者にインタビューをしました。1月20日の委員会で最終的な日本版NIH、正しくは日本医療研究開発機構の基本構想と研究支援戦略が決まります。詳細は近く、お知らせいたします。まったく、年初から席を温める閑もありません。今年もどうぞ宜しく願います。

 さてバイオです。

 困ったことに、年末最後のメールを送信してから、重要ニュースが目白押しで、今年のバイオ20大ニュースが、25大ニュースになってしまいました。猛烈な勢いで進化するバイオテクノロジーでは、1年間を振り返る悠長な考えが当てはまらなくなってしまったかの如きです。2013年のバイオは大きな変化が結実する2014年の胎動を示すニュースが報道されました。このメールでは第25番から21番までと、残りのトップ15の重大ニュースを解説いたします。2014年のバイオを25重大ニュースから占っていただければ幸いです。

 第25番のニュースは、昨年11月28日に山形県鶴岡市で遺伝子組み換えのクモ糸を生産する世界発の工場が操業を開始したことです。当地に本社を置く慶応義塾大学発のベンチャー企業スパイバーが、トヨタ系の部品企業、小島プレスと共同で開設しました。月間100kgの組み換えクモ糸のサンプル出荷が今年にも始まります。自動車から医療用具まで、幅広い用途を持つたんぱく質性の新繊維は材料革命を世界に巻き起こす可能性を秘めています。しかも、出発原料は環境に優しいバイオマスであります。勿論行く手には最大の課題である製造コストが待ち構えております。わが国製造業の底力と若いベンチャービジネスの頑張りに期待しております。また、今年1月には鳥取県米子市にある王子製紙の工場で、木質バイオマスを原料としたバイオリファイナリーの試験工場も稼働いたします。石油やシェールガスだけでなく、工業原料の多様化にいよいよバイオテクノロジーが本格的に貢献する兆しが現れてまいりました。

 第24番のニュースは、高血圧薬「ディオバン」を巡る臨床研究のデータ操作疑惑と明白な利益相反管理不全事件であります。現在も厚生労働大臣直轄の委員会で調査中ですが、この事件で明らかになったことは、わが国の臨床研究の基盤がいかに脆弱であり、データの操作や利益相反を管理できない状況にあることが明白になったことです。最もびっくりしたのは「医局の団結を図る」ことを目的に、臨床研究が行われており、それが問題であることに気付かない大学当局や大学の医師の倫理的な堕落です。これをこのまま放置しておいては、いくらわが国で画期的な新薬候補が出たとしても、イノベーションには繋がりません。まずは、臨床研究の被験者の保護と質を確保するための法律の制定が必要だと思います。この法律の下で、臨床研究をサイエンスにするための基盤整備(人材の育成も重要)を粛々と進めなくてはなりません。臨床研究を行い論文を書きたいからという言い訳はもはや通用しません。本当に意味のある科学的な疑問に対して、データと結果の判断の公明性を担保して臨床研究を行うための人材やシステムの確保が必要です。ICH-GCPは厳し過ぎるという意見もありますが、こんなこともできないようではわが国の臨床研究は永遠にサイエンスにはなりえないでしょう。百歩譲って、5年後にICH-GCPを導入することを宣言、基盤作りと投資を進めるべきでしょう。日本版NIHの喫緊の課題となると思っております。医師なら誰もが当然の権利のように臨床研究を行える時代は、もはやわが国には存在いたしません。

 第23番のニュースは、わが国で完全密封型植物工場で生産された農作物を原料に、世界に先駆けて動物薬「インターベリー」の認可が行われたことです。農業技術と医薬品の製造技術を見事に融合した技術突破です。同じシステムで抗体生産にも成功しており、バイオ医薬品など高付加価値商品の生産革命を引き起こす可能性があります。ホクサンと北海道産業技術総合研究所のグループが、2013年10月11日に農水省から販売認可を得ました。今年春には発売する予定です。完全密封型植物工場は農業のGMP化を可能とし、わが国が先行する技術突破です。組み換え医薬品を製造する農産物がフードや飼料チェーンの混入は避けるべきであるという2009年のEU指令以来、世界からも急速に注目を浴びてきました。今や世界で7カ所以上の完全密封型植物工場が試験稼働するまでになりました。今後、バイオ医薬のコスト削減は喫緊の課題となります。一つの重要なオプションが誕生したと考えております。

 第22番ニュースは、機能性食品の表示を巡る規制緩和です。昨年、北海道が2013年8月27日、北海道特保を認証することを開始、堅苦しい、そしてその割には大して科学的にも重要ではない、そのため世界保健機関ではトリビアル(些末)な制度と呼称されているわが国の特定保健用食品制度に風穴を開けました。安倍政権の規制緩和の大きな目玉として、今年中に機能性食品の食品機能表示制度改革が取り上げられています。健康を維持、増進するために、いかに妥当な表示と消費者による教育が必要であるか、大いに議論しなくてはなりません。米国に比べ、わが国の特保制度は消費者の教育という観点をまったく見失っており、有効な制度とはなり得ませんでした。この轍を再び踏まぬよう、努力しなくてはなりません。

 第21番のニュースは、武田薬品の社長候補人事です。順調にいけば、2015年にはとうとうわが国製薬企業のトップに、外国人社長が座る時代がやってきます。今回の人事は真夜中の発表というタイミングも異例で、大いなる驚きでした。本当の次期社長の大本命は米Millenium社の元社長でありましたが、昨年春に武田を彼女は去ってしまい。人事構想に大いなる変更が迫られたと推察しています。当面は日本と海外市場を二分して、日本市場は日本人の役員が取り仕切る格好で、実質上二人の社長が長谷川会長の下で執務する格好となるのではないでしょうか?

 さてここからは、第15番のニュースです。20番から16番までは年末に送信したメールをご覧願います。

 第15番のニュースは、東北メディカルメガバンク(TMMB)が5月から住民コホート研究を開始、またTMMBの特徴である3世代コホート研究も7月19日から開始いたしました。先行して研究を開始した福島県立医科大学の福島医薬品関連産業支援拠点化事業も今年2月18日にキックオフを行いました。2011年3月11日14時46分に東日本大震災以来、約二年を経過して、東北復興の鍵を握る2つのバイオ研究拠点が稼働しました。日本にはいままで無かったサイエンスがここに展開されています。皆さんもどうぞ継続的な関心を注いでいただきたい。12月26日にTMMBの取材を行いました、今月中にはインタビューを掲載いたしますので、ご期待願います。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130220/166357/

 第14番のニュースは、兵庫県の西播磨で2011年6月7日から試験運転を始めていたX線自由レーザー施設SACLAが、いよいよ2014年4月から民間に開放されます。世界最短波長のこの施設を使えば、サブミクロンの結晶でたんぱく質の立体構造を十分解析可能です。いよいよ新しい構造生物学による分子標的薬のベスト・イン・クラスの開発が始まります。
http://xfel.riken.jp/

 第13番目のニュースは糖たんぱく質の完全化学合成が実現したことです。京都のバイオベンチャー、糖鎖工学研究所がインターフェロンβをスイスのBachem社と共同で工業的に化学合成することができることを実証しました。こうした技術が進展すれば、製造工程による品質のばらつきが前提となっているバイオ医薬の姿が変わります。ほぼ低分子医薬と同様に均一な糖たんぱく質分子によって構成された純品バイオ医薬の誕生です。現実のバイオ医薬は多数の異性体や化学修飾を受けた誘導体で構成されている混合物であります。糖たんぱく質の完全合成の工業化によって、バイオ医薬に対する品質の要求水準は今後高くなることは間違いありません。また、バイオ医薬では不可能だった光学活性体の糖たんぱく質の開発も可能となると期待できます。将来が楽しみな技術突破です。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130902/170664/

 第12番目のニュースは1000人規模の日本人のゲノム情報が公開されたことです。わが国でも大規模ゲノム解析の時代が始まったのです。従来では発見できなかった病原性の強い希少変異遺伝子が見つかる確率が高まります。ある意味で真の創薬標的となる資格十分の変異遺伝子群がこれから発見される見込みです。口切りは2013年11月12日に厚労科研費補助金 「難病・がん等の疾患分野の医療の実現化研究事業」が、1200人分のエクソーム解析を行い、日本人集団による遺伝変異のデータベースを公開いたしました。
http://www.genome.med.kyoto-u.ac.jp/homepage
http://www.genome.med.kyoto-u.ac.jp/IntractableDiseases/
11月29日には東北メディカル・メガゲノム機構が、1009人の全ゲノム解析データを発表しました。同グループは2年半後には8000人の日本人の全ゲノム解析を完了、日本人の標準データベースを作成することを企画しています。これは今後、わが国の個の医療の基盤となる貢献です。大いに期待しなくてはなりません。

 第11番目のニュースはバイオ後続薬が、わが国でもじわじわと普及し始めたことです。欧州では大型抗体医薬である「リタキサン」の特許が昨年11月に失効しました。これから大型バイオ医薬が続々と特許切れを迎えます。わが国では日本化薬・テバ製薬が2013年2月28日に顆粒球コロニー刺激因子のバイオ後続薬の認可を獲得しました。また、日本化薬は韓国Celltrion社と開発した抗体医薬「レミケード」のバイオ後続薬の販売申請を、昨年9月11日に行いました。いよいよわが国でも、今年抗体医薬のバイオ後続薬が誕生する見通しとなりました。厚労省は年末にジェネリック薬50%の目標をぶち上げました。医療費高騰を面前にして、わが国もジェネリックやバイオ後続薬の普及にドライブがかかります。

 第10番目のニュースはわが国の小野薬品が開発した免疫抑制解除薬、抗PD-1抗体(ニボルマブ)が悪性黒色腫の治療薬として、2013年12月24日にわが国で製造販売承認申請をおこなったことです。年内に間違いなく、国産の免疫抑制解除薬が誕生します。小野薬品にとっても10年ぶりの自社開発品です。また京都大学本庶佑名誉教授との共同研究の成果であります。クレディスイス証券の推定では年間ピーク時に2000億円もの大型新薬誕生です。また、これは反個の医療の旗手として、多種のがん種に対して新たながん撲滅の手段となる可能性があります。昨年、フェーズIII試験が二つ失敗し、単剤で患者選択なしには有効性を期待できないがんペプチドワクチンの行き詰まりも、ニボルマブとの併用という新たな光明が見えてきました。
http://www.ono.co.jp/jpnw/PDF/n13_1224.pdf

 第9番のニュースは、今年度中にわが国に巨大な最先端のワクチン工場が3つ、実質的には4つ誕生することです。インフルエンザH1N1の2009年の大流行の際に、わが国のワクチン製造能力の不足が露わと成った結果、厚労省が1000億円を投入、建設を督励していた細胞培養によるインフルエンザワクチンの工場が、今年3月末には完成いたします。武田薬品工業、第一三共、化血研の3社が近く稼働させます。経産省の支援でUMNファーマが建設しているワクチン・生物製剤工場も稼働すると4つの巨大ワクチン工場を持つ国となります。それぞれの工場は年間60億円の維持・原料費がかかります。企業には大きな負担ですが、国民はパンデミックが来ないことを祈らざるを得ません。そうなると明らかな生産余力が生まれ、わが国の製薬企業は国内市場だけでなく、アジア市場への進出を検討せざるを得ないでしょう。いずれにせよ、いままで内向きだったわが国のワクチンビジネスが大きく転換する年となります。

 第8番目のニュースはわが国初の新薬候補が米国FDAのブレークスルー医薬の認定を昨年、始めて受けたことです。中外製薬が元日本ロシュのライブラリーを駆使して、発見したALKキナーゼ阻害剤、AF802がその画期的な新薬です。ゲート・キーパー変異にも有効で、肺がん患者の治療薬として2013年11月にわが国で製造販売申請されました。投薬した患者のレスポンス率は93.6%と世界最高、空前絶後の数字をたたき出しました。これだけ効果があれば、フェーズIIのシングルアームの臨床試験データで申請するのも無理はありません。わが国でも認可されれば、実質的にFDAと同じブレークスルー医薬の申請経路が開かれることになります。これからの薬は対象患者の少なくとも過半に効果がなければ、近い将来 薬と呼ばれなくなるかもしれません。医薬品のスタンダードはどんどん高くなっていることを認識しなくてはなりません。長期収載薬価など、既存の医薬品の再検討にも繋がる技術突端なのです。開発担当者のインタビューを近く掲載いたしますので、どうぞ楽しみに願います。
http://www.chugai-pharm.co.jp/hc/ss/news/detail/20130507150000.html

 第7番目のニュースはバイオベンチャー企業株高です。これはわが国だけではなく、世界的な現象で、2009年から日経平均よりバイオインデックスは常に上回っており、一昨年と昨年はさらに値を上げました。日経・バイオINDEXは2013年に128%上昇、つまり2倍以上に株価があがりました。有力ベンチャー5社もわが国で株式を公開、リスクマネーの流入で、バイオ産業自体の競争力が増強されつつあります。今年もこの波が続きそうで、暫くぶりのバイオ好景気。後半はバブルに転じるかも知れません。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140105/173176/

 第6番目のニュースは、官邸主導で医療イノベーション推進が本気で始まったことです。中でも、医療イノベーション関連予算を集結させた日本版NIH(日本医療研究開発機構)が2015年4月1日創設が決まったことは誠に画期的でした。今後、官邸・文科省主導で日本版NIHがどんどんと創設されることは間違いありません。厚労省はナショナルセンターの利権を守るという愚を犯したため、日本版NIHの主導権を失うという大きな過ちを犯しました。しかし、これは始まりの一歩に過ぎません。現状では医療イノベーション関連の予算管理に止まり、本当の国民の健康寿命延伸に貢献するかは保証できません。次に打つべき手は、ナショナルセンターを傘下に収め、臨床研究拠点を形成すること、さらには大学などの臨床研究を支援する公明正大なファンドの運用など、やるべきことは山積みです。持続的な改革こそ日本版NIHの成功の鍵であります。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131212/172846/

 第5番目のニュースは世界で二番目のアンチセンス医薬、そして全身投与製剤としては初のアンチセンス医薬「KYNAMRO」が発売されたことです。これによって長い間停滞していたアンチセンス医薬の開発も再び注目されるようになりました。抗体医薬、そしてワクチンの次としてオリゴ核酸医薬に再び熱い視線が注がれています。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130130/165852/

 第4番目のニュースは昨年の臨時国会で、薬事法改正と再生医療新法が成立したことです。これによって安倍政権が再生医療実用化に本気であることが、国内外に響き渡りました。全世界から再生医療ベンチャーがわが国を目指すという、21世紀初頭にミレニアム計画発表で日本のバイオに世界から注目が集まった状況が再現しつつあります。安全性が担保され、有効性もあるていど証明された再生医療製品の条件付き承認と、再生医療新法による医療機関が細胞の培養を外部機関や企業に委託解禁によって、再生医療の実用化は大幅に加速されると思います。PMDAの近藤理事長は自家も他家細胞も条件付き承認の対象となると明言しており、久々の大規制緩和となることはほぼ確実です。しかし、一度不合理な事故が起これば、世論は逆転することは必定です。くれぐれも安全性の担保だけは怠りなく。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131209/172781/

 第3番目のニュースは、英国Oxford Nanopore Technologies社が昨年11月よりとうとう第4世代DNAシーケンサー、ナノポアシーケンスの試用を開始したことです。年内にも完全商業化が始まると期待できるでしょう。発表から実用化は1年間は遅れましたが、低コスト、超迅速、試薬もほとんど不要、自動化に公的と夢のシーケンス技術、ナノポアシーケンスは着実に発展していました。わが国でも大阪大学発のベンチャー企業、クォンタムバイオシステムズが商品化で急追しております。第4世代が実用化できれば、ゲノム解析は医療という応用の頸木を放たれ、あらゆる用途に広がると確信しております。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131024/171641/

 第2番のニュースは米国で第二世代のDNAシーケンサーが世界で始めて医療器機として認可をうけたことです。これによってゲノム情報を本格的に医療に応用するクリニカルシーケンスの時代に突入しました。ゲノム情報の善用は間違いなく医療を革新します。ゲノム医療というコンセプトも頭を見せて参りました。今回米国食品医薬品局が医療器機として認可したのは、米Illumina社のMiseqDxです。合わせて、膿疱性肺線維症のゲノム解析による診断キットと、ゲノム上のどの部位のゲノム配列を解析して診断するキットも診断用具として認可されました。まさに第二段階に入った個の医療(第一番のニュース参照)の基盤を形成する認可となりました。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131121/172386/

 第1番目のニュースは個の医療が新段階に入ったことです。特定の遺伝子の変異ではなく、特定の遺伝子の特定の変異が患者選択の条件となる時代に突入しました。GlaxoSmithKline社が2013年5月30日に米国認可を獲得した、転移性・手術不能悪性黒色腫治療薬の 「TAFINLAR」 (dabrafenib)は、BRAF V600E変異を持つ成人患者、「MEKINIST」 (trametinib)はBRAF V600E or V600K 変異を持つ悪性黒色腫の患者に使用が制限されました。また血栓症のリスクで一度米国で販売停止となったBCR-ABL阻害剤「lIclusig」(ponatinib)は、ゲートキーパー変異であるT315Iを持つ慢性骨髄性白血病患者に限定して、2013年12月に再発売にこぎ着けました。米Ariad Phrmaceuticals社は対象患者を絞り込むことで、新薬を救いました。しかし、こうした個の医療の進展は市場をより狭め、医薬品企業のビジネスモデルの成立を困難にしつつあります。昨年11月には米国のNPO、Friends of Cancer Researchが、5社の製薬企業をから4種の分子標的薬と免疫抑制解除薬(免疫チェックポイント阻害剤)を集め、患者のゲノム変異プロファイリング(203遺伝子)を一挙に解析し、標的変異を持つ患者をそれぞれの標的薬の臨床試験に振り当て、どれも該当しなかった患者を免疫抑制解除薬の臨床試験に繰り込む、画期的な臨床試験(マスター・プロトコール)を開始しました。もはや、新薬と診断薬が1:1に対応するコンパニオン診断薬の時代は終わりつつあります。変異プロファイルを診断、その後、最も適切な治療薬を提供する個の医療の第二段階が始まるのです。国際がんゲノムコンソーシアムのがんゲノム解析の結果も、2013年に発表され、その結果、15%から30%のがんだけがドライバー遺伝子を持つことが明白になりました。つまりドライバー遺伝子を分子標的とした抗がん剤開発では、がん患者の15%から30%しか救えないのです。がん特異代謝阻害剤、がん幹細胞阻害薬、そしてがん免疫抑制解除薬(がんワクチンとの併用も)など、個別化とは逆行する反個の医療の蠢動も始まりました。大きなバイオ研究の潮目となることは間違いありません。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131216/172912/
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131101/171885/
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130807/170247/

 さあ今年もバイオ激動の年となりそうです。皆さんと共に大きく飛躍いたしましょう。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/