あけましておめでとうございます。
 新たな年を迎えるにあたり、読者の皆様にこの場をお借りして新年への期待と抱負を申し述べさせて頂きます。

 ご承知の通り、昨年は国の医療研究の進め方に関して新たな道標が示された年でした。
 2月に内閣官房に「健康・医療戦略室」が設置され、医療産業を「日本再生戦略」の柱に据えることが再確認されました。また、8月にはこれに関わる推進本部が設置され、来年にも新たな枠組み(新法人)で国の医療研究がスタートすることが示されています。

 本法人の設置により、基礎研究の成果の産業応用への加速化が期待されています。この分野では、これまで、国による創薬支援や臨床研究を中核とした橋渡し研究の基盤が整備されてきました。新法人の設置により、これらが一気通貫で実施できる枠組みが構築されます。日本の基礎研究の成果が医薬品や医療機器などのかたちでスムーズに社会に還元されることが期待されるのです。

 そのような観点で、新法人の設置は、新薬等の上市に取組む産業界だけでなく、新しい医療技術を待ち望む国民からの期待も大きいと思われます。基礎研究と産学連携を車の両輪として推進しているJSTとしてもまことに喜ばしく思います。これまでJSTで行われてきた成果が、より効率的に社会や産業に展開されることを期待したいと思います。

 このような新法人への期待と併せて、設置が期待される以下の3つの機能について考えを述べたいと思います。

1.戦略的疾患領域の設定
2.研究開発への多様なセクターの参画誘導
3.機動的な運営体制の構築

 1.は多様な疾患の中から、国が研究として取組む「肝要な疾患」を選定する機能です。限られた予算を効果的に活用するために研究開発の優先順位を付けることは重要です。難治性、市場性、社会コストなどを総合的に勘案し、この法人にしかできないハイリスクかつハイインパクトな研究開発の設定と推進を期待します。

 2.は1.で選定された研究開発のボトルネックに対する研究開発の推進方策です。イノベーションの担い手が専門の異なる多様な人材であることは言うまでもありません。特に医療技術開発では、理学、医学、薬学、化学、農学、工学などの学術分野や企業(製薬、CROなど)などの多様なセクターからの参画が必要です。医療技術の新しい価値創造のための最適な人材の参画と効果的な実施体制の構築はイノベーション政策における国の重要な役割といえます。

 3.は2.の研究開発の効果的なマネジメントの上で重要になります。医療技術研究は、成果の展開によって体制の再構築が必要になることが予想されます。また、研究開発の中核的な人材も変遷していく可能性があります。さらに、同様の技術の進捗やベンチマーク等から研究開発の中止を余儀なくされることもあるでしょう。プロジェクトの成果の最大化にはこのような機動的な運営体制と卓越したリーダーが必要とされます。

 以上、新法人に期待される3つの機能を述べさせて頂きましたが、JSTには、上記のような戦略的な取組を多様な分野で実施してきた実績があります。来年の新法人の設置に際しては、これまでの成果や経験などを積極的に提供し、プロジェクト等の迅速な立ち上げに貢献したいと思います。

 最後に本年のJSTの注力分野について触れさせていただきます。JSTでは持続社会の実現に貢献する科学技術をこれまで以上に積極的に取り組んで参ります。具体的には、エネルギー、社会インフラ、ナノテクノロジー・材料、情報システム、希少資源、そして食料生産に関する分野です。特に、生物科学を含めた分野融合による新たな技術潮流の創出や、革新的な共通基盤技術の育成に努めます。JSTではこれらの分野について、エビデンスに基づいた投資領域の優先順位を定め、ハイリスクかつハイインパクトな研究に積極的にチャレンジします。また、自然科学の分野のみならず、社会科学との連携や融合も実践し、科学や技術に留まらない真のイノベーションに貢献していきたいと考えています。