あけましておめでとうございます。

 昨年は、安倍政権による日本再興戦略における医薬品産業強化方針の決定や、日本版NIH創設の決定が行われ、さらに再生医療分野では、新に法整備が進められる中でiPS細胞を使用した滲出性加齢黄斑変性の臨床研究が承認されました。本年は日本の創薬・ライフサイエンス研究開発の飛躍元年となることを期待しています。

 翻って、弊社の事業領域である細胞培養の分野では、従来法による医薬品探索の限界が唱えられる中で、再生医療の急速な展開もあいまって、今年は3次元細胞培養が創薬・ライフサイエンス研究開発のスタンダードになりうるひとつの節目になる年と感じています。

 近年、分子標的薬が特に注目されており、標的分子ありきで新薬が開発されているものと想像しがちですが、実は多くの医薬品は標的が分からないまま細胞の変化を手がかりに探索されてきたものです。実際に、1999~2008年の10年間にFDAに認可された医薬品の中で、低分子かつファースト・インクラスの医薬品は50個(抗体医薬は25個)存在し、そのうち28個が、細胞の表現形を見極めるフェノタイプスクリーニングにより見出されており(ターゲットベースドアプローチは17個)、今後もフェノタイプ分析に基づく創薬開発の重要性は変わらないものと考えられます。

 これまで主流となっている細胞培養方法(平面培養)は、細胞内分子インタラクション等の基礎解析には寄与しうるものの、in vivoフェノタイプの再現には甚だ不十分であり、生体の微小環境を反映する3次元培養がその代替手段になるであろうことが、2007年の段階でLeeら(2007年、Nature Methods)及びYamadaら(2007年、Cell)に既に指摘されております。

 平面培養は、細胞を増やす目的には非常によい方法であるものの、培養容器との接着により、生理的条件にはない過度な増殖シグナルが入っており、細胞本来の性質を十分反映していないことが判っています。一方、3次元培養は過度な培養容器への接着がないため、平面培養よりも生体内の細胞の形質に近いことが判明しています。弊社3次元培養用プレート(NanoCulture Plate(NCP))を使用した3次元培養と平面培養との比較実験でも、1)平面培養では細胞が本来保有しているはずの各種増殖因子に対する反応性を消失しているが、3次元培養では増殖因子に対する感受性を保持している、2)ある種の抗がん剤では平面培養のin vitro実験データと動物実験のデータが相関せず、3次元培養と動物実験のデータは相関する、3)幹細胞から脂肪細胞への分化誘導試験では、3次元培養で分化させた細胞の遺伝子発現パターンは生体から採取した細胞と近似する(平面培養で分化した細胞は乖離する)など、平面培養と比較して、3次元培養試験の重要性・必要性が明らかとなりつつあります。

 上記背景のもと、米国アカデミア、製薬企業を中心に3次元培養へのシフトは明確におきています。論文数は年々増加、グローバル製薬企業における3次元細胞培養技術の導入は加速しており、既にすべてのin vitro実験を3次元培養で行う米国バイオベンチャーも幾つか出てきています。さらに、再生医療の立ち上がりも研究現場における3次元培養の普及を後押ししています。

 弊社としてもこれら3次元培養市場の拡大を受け、昨年締結したJSR株式会社と業務資本提携を皮切りに、本年よりアカデミア・製薬企業における3次元培養研究を支援する3次元培養プレートNCPの販売拡大を強力に進める所存でございます。NCPの提供を通じて、日本の医薬品開発・再生医療・ライフサイエンス研究に微力ながら寄与していきたいと考えております。