謹んで新年をお祝い申し上げます。

 2000年に初めて解読されたヒトゲノムは塩基配列の読み取りに100億円以上かかりましたが、次世代シーケンサの登場により現在では数十万円に下がりました。近いうちに10万円程度になるでしょう。個人の遺伝的特性を見るSNP解析についても、米国の23andMe社が99ドルで提供するまでに下がっています。このように遺伝子解析のコストが急激に下がり、個々の体質に合った病気の予防、診断、治療といったオーダーメイド医療が近づいており、近い将来、人間ドックや健康診断に取り入れられることでしょう。次世代シーケンサによって、生まれつきの塩基配列だけでなく、現在の状態である遺伝子の働き具合(発現)、メチル化(エピゲノム)といった情報も解析でき、個別化医療で利用される重要な手法になりました。今年も次世代シーケンサを利用した話題が益々増えてくるでしょう。

次世代シーケンサの医療機器承認と普及

 昨年の次世代シーケンサに関連する大きなニュースとして、米国イルミナ社の次世代シーケンサMiSeqDxシステムが米国FDA(食品医薬品局)の体外診断用医療機器(IVD)の認可を受けました。同時に遺伝子診断の為の体外診断キットが認可を受け、次世代シーケンサの医療応用が今年、進んでいくと考えられます。

 また、米国Myriad Genetics社の乳がんリスクの遺伝子診断に関連して、単離されたDNA(BRCA1およびBRCA2)自体には特許適格性がない、という米国最高裁判決がでました。米国女優のアンジェリーナ・ジョリーさんがBRCA1の変異を理由に乳房削除したのは記憶に新しいところです。遺伝子配列の解析により乳がんなどのリスク検査をしようとした場合、既存の個々の遺伝子特許に抵触する可能性が低くなりました。つまり次世代シーケンサで多くの遺伝子の塩基配列を読み取り診断に用いる際のハードルが低くなり、より普及していくでしょう。

次世代シーケンサのデータ解析の本格化

 国内の次世代シーケンサに関する関心も高まっています。次世代シーケンサのユーザや研究者の集まりの一つである「NGS現場の会」は、2011年の第1回目は105名の参加者でしたが、一昨年435名、昨年699名と大きく成長しております。また国内大手メーカーがゲノム解析に参入するとも報道されています。

 次世代シーケンサの普及と稼働率が高まると問題になるのがデータ解析です。様々なソフトウェアやサービスが公開され、かつ、どう意味づけしていくのか、どう理解していくのか、バイオインフォマティクスが重要になります。そのためには簡易に解析して全体像を把握し、見てわかることが必要になります。

今年の抱負:ゲノムクラウド解析と可視化サービス「Chrovis」

 次世代シーケンサのデータをクラウドで解析して、閲覧ソフトウェアで解析できるサービスとして、「クロビス」を始める予定です。次世代シーケンサから出力されたファイル(FASTQ, BAM)をアップロードすると、自動的にクラウドで分散解析し、テンクー独自のビューアで染色体から塩基配列までなめらかにズームしながら確認でき、変異(SNP)や置換・欠損(IN/DEL)なども見ることができるサービスです。染色体のChromosomeと可視化のVisualizationをかけて、Chrovis (クロビス)と名付けました。まずはヒトの変異を対象にし、その後、徐々に拡充をしていきたいと思っております。

 私は以前からゲノム情報の可視化について、研究として取り組んでいました。バーチャルリアリティ技術とゲノム情報という一見関係のない分野同士を「可視化」というキーワードでつなぎ、発現量、コピー数、ゲノムの解析に役立てることを行ってきております。今回の「クロビス」でも可視化、見える化に重点を置き、今年は展開をしていきたいと思っております。皆さんのご協力も得て、良いものにしていきたいと思っておりますので、今年一年、よろしくお願い申し上げます。