天然資源の乏しい日本において、 科学力を強化していくことは今後の発展に不可欠です。圧倒的な科学力と政治力を保持する米国や急成長中の諸国と渡り合い、3年、30年後そして300年後も日本が国際的なイニシアティブをとる未来の実現には、世界に通じる人材育成システムの構築が一つの鍵です。本年、世界中の日本人研究者が繋がり、互いを高め合うためのネットワークキング、日本人研究者ネットワークUJA(United J-Researchers Abroad) が本格始動します。UJAは世界を結び、サイエンス、そして日本の未来を拓く史上初のプラットフォームです。

 私は2012年よりアメリカのシンシナティ大学でプロフェッサーシップを得て研究室を主宰しています。アメリカでは一つのポストに300名をこえる応募があり、ジョブハンティングは激戦を極めます。私のジョブハンティングは、アメリカで成功している日本人の先輩方やポスドク時代に、ボストンで仲間と築いた日本人ネットワークからの経験談や情報の共有に支えられました。海外研究において、諸国の仲間と力を合わせることは大変重要です。さらに、酒を酌み交わせばすぐに分かり合える文化を共有した日本人同士の繋がりは、海外で勝負する大きな力になります。

 2012年ノーベル医学・生理学賞を受賞された山中教授 は「日本人の技術者は、間違いなく世界一です。器用さ、勤勉さ、創意工夫、チームで取り組む力など、研究者として重要な素養を備えている。現在は米国にも研究室を構えているのですが、日本人は素晴らしいと痛感しています。」と仰っています。

 まさに海外で研究生活を送ることで、日本人研究者の多くの素晴らしい点に気付かされます。しかしながら同時に、日本人研究者の国際的プレゼンスが実力と見合わず低いと感じることもあります。日本人の美徳である謙虚さ、そして英会話力の不足のため、 イニシアティブをとりきれていない、そんなシーンを学会やビジネスの場面などで見かけることがあります。これは実は深刻な問題です。科学技術立国として、テクノロジーを共同開発したり、世界へ広め活用していくための障壁となりえます。この問題について、国際的な舞台でのプレゼンテーションとソーシャライズの能力を磨くこと、すなわち海外留学による研究者の国際交流の循環を高めることはわが国の重要課題です。これには3つの要素が大きく影響するでしょう。

1)留学における研究・生活情報
2)留学後のキャリア支援
3)国の支援政策

 前もって留学先の研究室の様子を知ること、加えて周囲の人々、そして家族連れであればその街での暮らしについて活きた情報を取得することは、円滑な留学生活の立ち上げと成功に重要です。UJAが行った留学経験者を対象としたアンケートにおいて、最も多かった意見として、「留学した後どうすればいいかわからない」「独立するための情報不足」「多くの方との情報網が不足」と、いずれも留学後の将来への不安が表れています。一方で日本政府には現在、誰が留学しているのかを把握するシステムがなく、留学体験者からのフィードバックを政策へ反映する機能が脆弱です。

 こうした問題を日本人研究者間の草の根ネットワークで解決し、効果的な頭脳循環システムの支援体制を築くためUJAは結成されました。UJAは、まず、世界の日本人研究者同士の大規模かつ有機的な結びつきをソーシャルネットワークサービス(SNS)で促進するウェブサイトを始動させました。 その上で、ボトムアップによる国へのフィードバック機能を持つネットワークとして、UJAは3つのミッションに取り組んでいます。

1)留学を考える人へ情報・支援を提供する窓口の整備
2)国際舞台において活躍し続けるための相互支援とキャリアパスの透明化
3)教育・科学技術行政機関との情報交換および連携

 全世界に張り巡らせた日本人の強固なネットワークで、日本人一人ひとりのキャリアを向上させながら、国際的なプレゼンスを向上し、組織の発言権と影響力を獲得していくこと、及び世界の研究におけるトレンド形成やルール作りにおいても主導権を発揮して、世界をリードしていく体制を築くことを狙っています。

 2014年を元年とし、和の国の民とし全世界に拡がった点を結び, ひと続きの「輪」としていきたい。 日本が世界をリードする3年、30年、300年後を築きたい。UJAは日本のサイエンスのより明るい未来へ取り組んでいます。そんな壮大な取り組みに賛同していただける個人、コミュニティー、 団体、企業、政府関係者、あらゆる立場の人のご参加、ご支援また新たなご提案をお待ちしています。

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