ゲノム編集(Genome editing)は、2010年の人工ヌクレアーゼTALEN、2013年のRNA誘導型CRISPR/Cas9の開発によって、まさに夢の遺伝子改変技術となった。単なる遺伝子ノックアウトだけでなく、1塩基レベルから染色体レベルでの正確な遺伝子改変が、ゲノム編集によって実現しつつある。2014年は、ゲノム編集による網羅的遺伝子機能解析や疾患モデルの細胞・動物の作製、有用品種農畜水産物の作出など多くの成果が期待される。

 ゲノム編集の技術開発の中心は海外にあり、そのスピードは驚くべきものである。特に昨年CRISPR/Cas9が報告されてから開発のスピードは加速し、毎週のようにゲノム編集関連の論文が公開されている。原動力となっているのは、アカデミアに必要なリソースがNPOを介して提供され、開発を相互に支援する体制である。残念ながら、日本のこの分野の技術開発に関する貢献は高いとは言えず、独自技術の開発と人材育成は急務である。国内でも様々な生物において利用が広がっているが、適用することだけに満足しているようでは国際競争に勝てる技術開発に発展しないことは言うまでもない。

 任意のDNAとの特異的結合を基盤とするゲノム編集は、ヌクレアーゼによる編集だけでなく、様々な機能ドメインとの連結による新たな技術展開が期待される。例えば、転写活性化ドメインや抑制ドメインと融合した人工転写因子を利用して遺伝子を活性化や抑制する技術や、蛍光タンパク質との連結によって染色体を可視化する技術がある。後者の技術では、CRISPR/Cas9にGFPを連結して特定の遺伝子座を可視化することが最近報告された。さらに、今後最も期待されるのは、DNAやヒストンの修飾酵素と連結した種々の人工酵素によってクロマチンの局所的な修飾レベルをコントロールする技術(エピゲノム編集;Epigenome editing)である。エピゲノム編集ではTALEを用いた報告が先行しており、当研究室で開発したPlatinum TALEテクノロジーが有用と目される。エピゲノム編集はゲノムDNAの切断を伴わない安全な技術として医学分野での利用が期待されている。

 国内のゲノム編集支援を目的としてゲノム編集コンソーシアムをスタートさせてから今年で2年となり、コンソーシアムの必要性はますます高くなってきたと感じている。ゲノム編集に関しては、作製した生物の規制など議論するべき問題も多く、今年これらの問題の議論と国内の技術発展を目的として、ゲノム編集学会の発足を目指している。ゲノム編集技術のすそ野を広げ、既存技術との融合を図るために、皆様の参加と支援を心から願うものである