こんにちは。1週おきにこのメールを担当しております、日経バイオテク記者の増田智子です。2013年も残すところ6日となってしまいました。来年も日経バイオテクをよろしくお願いいたします。

 年末年始の休暇中に読む本は決めてありますか? 米国で、個人のゲノム情報について研究成果を周知したり、学生・一般向けに教育活動を行っている団体のPersonal Genetics Education Project(pgEd)が「お気に入りの遺伝学、生命倫理、科学と社会の関係についての本を挙げてください」と募集し、リストアップされた本を紹介します。
http://www.pged.org/whats-your-favorite-genetics-bioethics-science-and-society-book/

 フィクション編とノンフィクション編がありますが、ここではフィクションを取り上げます。邦訳が出版されているものは邦題を挙げます(カッコ内は出版社と出版年)。

「ウール」(角川書店、2013年)ヒュー・ハウイー

「ねじれた直観」アレグラ・グッドマン(集英社、2012年)

「湿地」(東京創元社、2012年)アーナルデュル・インドリダソン

「ジェンナ 奇跡を生きる少女」(小学館、2012年)メアリ・ピアソン

「タイムトラベラーズ・ワイフ(きみがぼくを見つけた日)」
(武田ランダムハウスジャパン、2004年)オードリー・ニッフェネガー

「宇宙播種計画」(早川書房、1967年) ジェイムズ・ブリッシュ

「さなぎ」(早川書房、1966年)ジョン・ウィンダム

"Long for this World" Michael Byers

"Mendel’s Dwarf" Simon Mawer

"Second Glance"、"Sing You Home" Jodi Picoult
(ジョディ・ピコーは「救済者兄弟」についての小説「わたしのなかのあなた」の著者)

"Unwind" Neal Shusterman

 私はリストにあるもの全部を読んだわけではないのですが、まず「ねじれた直観」は、がん細胞を研究している研究室での実験データねつ造を巡る小説でした。舞台は1980年代後半のボストン。登場人物のポスドクや研究者の立場が崖っぷちで、ハラハラしました。作者の妹はハーバードのがんの研究者だそうです。かなり長い話ではあるものの、日経バイオテクの読者なら面白く読めると思います。原著の出版は2006年。

 「湿地」は、アイスランドの刑事が主人公の推理小説。deCode Genetics社に相当する遺伝学研究所が少し出てきます。原著がアイスランドで出版されたのは2000年とのことで、当時のアイスランドの人が抱いていたdeCode社に対するイメージがのぞけるようです。この10年ほどでどう変化したのかを知りたくなりました。

 「ジェンナ」はヤングアダルト向けの本で、米国の児童文学の賞もとっています。「事故で昏睡状態から目覚めたら、自分の身体が大変なことになっていた!」というパターンの小説ですが、生命倫理や科学と社会の関係についての問題をストーリーに盛り込み、中学・高校生がさまざまなことを考えるきっかけを上手に作っています。続編も出ているが翻訳はありません……。

 映画にもなった「きみがぼくを見つけた日」は、タイムトラベル恋愛ものと見なすのが普通だと思いますが、難病の人とそれを支える家族の話、と解釈すれば遺伝学・生命倫理の本です。自由意志vs.決定論の話でもあります。

 この本のリストを作製したpgEdは、高校や大学で個人ゲノムに関する教育に使うための授業計画書や資料もオンラインで公開しています(http://www.pged.org/lesson-plans/)。この団体が備えているのは、ゲノム情報が医療現場で使われるようになる近い将来です。日本でも、若者はもちろん、普通の大人、特にゲノム医療の主な受益者となるであろう中年~高齢者に向けた教育プログラムを用意する必要があると思います。

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