今回成立した再生医療新法(再生医療の等の安全性の確保等に関する法律)は、再生医療を医師が行うことの責任を明確化した法律だと言えるでしょう。これまでは再生医療に関して、企業に責任の主体がある薬事法と、医師に責任の主体がある医師法の下で開発が行われていたわけですが、薬事法では治験を経た完成品しか認められず、一方、医師の裁量で行われる自由診療ではその実態が不明でした。一定の制限下に医師の責任で再生医療を行うことが、これで明確化されました。

 ちなみに同時に成立した改正薬事法で新たに定められた「再生医療等製品」に関しては、早期承認制度が導入されました。こちらは仮の完成品を認めるということでしょうか。

 再生医療新法では細胞加工の外部委託が可能になったことが注目されていますが、企業が加工を受託することは役務を受託することで、決められたプロセス通りに作業が行われたかどうかは保証するが、品質は保証しないということで、責任範囲の明確化が進んでいるようです。再生医療は医師法下の医療行為であり、基本は医師の責任で行われるということです。現在、作業フローと責任分担に関して産官共同で詳細な検討がなされていますが、ここが肝でしょう。

 これまで再生医療の分野に乗り出して来た医師たちは、研究の段階から先の事業化への道筋が見えずに、追い込まれた気持ちになっていたと聞きます。研究費や補助金から脱却して産業化への道筋が明らかになることが期待されます。

 同じようなことを、12月3日に日経バイオテクが主催したセミナー「希少疾患・難病の治療薬開発におけるゲノムの活用」でも感じました。最後のパネルディスカッションで話題の中心となったのは、いわゆるクリニカルシーケンスといっても、現状はあくまで研究段階でのこと。臨床の現場で患者に適応されるまでには、偶発所見の扱いや費用負担など、誰が責任を持つかを明確にしなければならないということでした。

 折しも23アンド・ミーの簡易遺伝子診断にFDAが販売中止を求めたばかり。FDAの言い分は、遺伝情報を利用者に知らせることに問題はないが、検査結果に基づいて医療上の決断をするかも知れない以上、検査結果の正確性を検証する必要があるというもの。FDAは現在、消費者に直接販売されるキットだけでなく、研究として行われる遺伝子検査、遺伝子データを解析するソフトウェアなどに関する規制も検討しているといいます。

 新しい技術を産業化するためには、リスクとベネフィットを考慮した法規制が重要なことは言わずもがなですが、日本における再生医療がその嚆矢となることに期待しています。

                      日経バイオテク編集長 関本克宏

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