こんにちは。毎月第1金曜日と第3金曜日、第5金曜日の日経バイオテクONLINEメ ールの編集部原稿を担当しております日経バイオテクONLINEアカデミック版編集長 の河田孝雄です。先週の第5金曜日に続き、2週続けてお目にかかります。

 今週は火曜日(12月3日)から今日金曜日(12月6日)まで神戸市で開催の第36回日本分子生物学会年会を取材しております。年会長を大阪大学教授の近藤滋さん、組織委員長を東京大学教授の武田洋幸さん、プログラム委員長を東京大学教授の門脇孝さんがお務めの第36回年会は、プログラムの充実ぶりが特に目立っているように感じております。事前登録者数は5000人に当日参加を加え、8000人程度の参加者数が見込まれるとのことです。

 初日朝9時からのワークショップ「ゲノム編集研究の新展開」は9時の開始時から立ち見でした。2日目午後の特別シンポジウム「薬を創るということ」や、3日目午前中のシンポジウム「シグナル伝達温故知新-発見者に聴く-」は、座席数650の会場が立ち見でした。

 また、プログラム委員長の門脇さんがオーガナイザーを務めた“目玉の”シンポジウム「あるべき橋渡し研究を語り合う」は3日目午後に開催され、最初の基調講演を務めた阪大の岸本忠三さんは講演時間が35分ほどで、これに続く東大の菅裕明さん、京大の岩田想さん、東大の山内敏正さん、東大の間野博行さん、東大の岩坪威さんは講演時間が1人18分(質疑討論を含む)という、たいへん贅沢なプログラムでした。

 膨大なインプットに比べ、アウトプットがまったく追いついていませんが、短い記事4本を、神戸現地から発信しております。

[2013-12-6]
第36回分生年会の“ガチ議論”の会場での終了は21時半過ぎ、
「次もまたガチやって欲しい」と近藤年会長
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131206/172737/

[2013-12-6]
神戸の第36回分生年会の特別シンポジウム「薬を創るということ」は650人会場が立ち見に、「創薬は5人でできる」と上野Sucampo社長が強調
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131206/172734/

[2013-12-4]
「研究公正性の確保のために今何をすべきか?」、日本分子生物学会年会で
3日間連続で計9時間の理事会企画フォーラム
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131204/172676/

[2013-12-3]
神戸で開幕の第36回日本分子生物学会年会は4日間8000人、年会企画は
海外ポスドク招聘、創薬、ガチ議論
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131203/172672/

 学会の理事会が企画したフォーラム「研究公正性の確保のために今何をなすべきか?」は3日間の午前と午後、合計9時間にわたって開かれました。

 キャリアパス委員会が企画したランチョンセミナーは2日間行われ、初日には、門脇さんのシンポジウムでも登壇した東大の菅裕明さんが、「ベンチャー起業『夢と野望』の心得とその功罪」と題する講演をなさいました(聴けませんでしたが)。

 夜のフォーラムは、初日に「科学を伝える仕事の需要と供給バランス-活かせていますか?専門広報-」を、2日目に「生命医科学研究の情報発信-研究者と疾患当事者間のコミュニケーションを考える」を取材しました。

 今回の年会で、初めてづくしといえる年会特別企画が目立っています。先に紹介した2日目の特別シンポジウム「薬を創るということ」も年会特別企画でした。3日目夜の年会特別企画「生命科学研究を考えるガチ議論」は、プログラムには18時開始で20時終了と記載されましたが、実際には、会場の制約ぎりぎりである21時半過ぎまで行われました。神戸ルミナリエの終了予定時刻21時を30分過ぎていました。また異色といえる「学会とJazzの融合」やアート企画「サイエンスとアートの接点」も金曜日午前中まで行われていました。

 4日目午後の年会特別企画はこれからですが、1000人分を用意したという最終日イベント「大昼食会」に続き、13時から「生命科学の明日はどっちだ?」をテーマとした「2050年シンポジウム」と「公開プレゼンテーション(市民公開講座)」が予定されています。

 ポスター発表は3日間合計で1000件超で、一部しか見ることができませんでしたが、参加者の方々の会話の中で、CRISPRやTALENの話題が頻繁に聞こえました。「CRISPR Craze」と題する記事がScience誌に掲ったことを、京都大の真下知士さんが初日のシンポジウムで紹介なさっていましたが、たいへんな技術革新では、と改めて思いました。

 1年から2年かかっていたノックアウト(KO)マウスの作製が、1カ月から2カ月程度で可能になりました。KOラットも、ほぼ同じぐらいの期間で作製できます。CRISPR関連の発表をたくさん聞いたのでどなたから聞いたか、いま覚えていませんが、分子生物学的手法を持っている研究室なら、1週間から2週間ほどでCRISPRを導入できる、ということのようです。

 7年間在籍した米Harvard大学から、この9月に三重大学大学院医学研究科に赴任した黒田垂歩さんからは、米国では、これまでRIAiによるノックダウンでやっていた遺伝子の機能解析をみんな、CRISPRによるノックアウトに切り替えた、という旨のお話しをうかがいました。

 門脇さんのシンポジウムでは、京大の岩田想さんが、抗体断片を利用した膜たんぱく質の結晶化がハイスループットになってきていることや、2013年春から利用できるようになったX線自由電子レーザー施設「SACLA」でたんぱく質の結晶構造解析を行うと回折データ取得に要する時間はわずか20分に短縮できていることを紹介しました。SPring-8などの放射光施設では10回データ取得が必要で、(待ち時間も含めて)7カ月かかっていたのが20分になったとお話しでした。岩田さんは、1年ほど前からSACLA利用技術開拓グループのグループディレクターもお務めです。

[2012-4-24]
膜たんぱく質構造の岩田想教授、JST加速課題で5年5億円、自由電子レーザー利用も加速
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120424/160738/

 創薬などに役立つ分子生物学の技術のスループットが急速に向上していることに改めて感心しております。

 ゲノム編集技術につきましては今週月曜日(12月2日)発行の日経バイオテクで、4ページほどの特集記事をまとめました。ご覧いただければ幸いです。

[2013-12-3]
日経バイオテク12月2日号「特集」、新技術“ゲノム編集”が威力
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131203/172649/

[2013-11-30]
広島大と京大、プラチナTALENで高効率ゲノム編集、ラットKO成功率100%も
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131130/172617/

[2013-11-28]
阪大RIMDの伊川教授ら、CRISPR/Cas9プラスミドDNAの受精卵注入で
KOマウスを1カ月で作製
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131128/172568/

           日経BP社 医療局 先進技術情報部
           日経バイオテクONLINEアカデミック版編集長 河田孝雄

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