「私は子育て世代を対象にした媒体の記者ですが、お母さんに遺伝子組み換えって言っただけで、すぐにそれはダメですって言われて終わりなんです」。その一言で、場のトーンが変わりました。12月2日に開催されたバイテク情報普及会のメディアセミナーでのことです。

 シンジェンタジャパン、ダウ・ケミカル、デュポン、バイエルクロップサイエンス、日本モンサント、BASFジャパンが会員のバイテク情報普及会は、遺伝子組み換え作物の認知度向上を目指して活動しています。今回のセミナーでは、「創造的破壊:農業輸出とイノベーション」「穀物供給の現状と課題」「食料安全保障と遺伝子組み換え技術」と題した講演とパネルディスカッションが行われ、現状が“正確に”報告されました。

 が、それではどうもダメらしい。「これまでにも正しい知識を伝えようとしてきたのですが」と農業関連のパネリストが苦笑いしながら話します。一方、創造的破壊について話をしたのは社会学・経済学の専門家で、「すでに食べてるなんて知らなかった」「原発とは違うんでしょうね」「そんなことウチのばあさんに言ったって分からないよ」などと素朴かつ鋭い突っ込みを入れます。

 実際、今年3月に公表された同協会が男女1000人を対象に行った調査でも、9割が遺伝子組み換え食品を知っていると答えながら、内容まで知っていると答えたのは4割にとどまっています。

 「それは知らなくてもいいからじゃないだろうか」「知るための理由が必要なのでは」。議論はそちらの方向に進んで行ったような気がします。「日本がガラパゴス化してしまう」「世界的に見れば遺伝子組み換え作物がなければ成り立たなくなっているのです」。

 確かに、失明を防ぐことを目的に開発されたビタミンAを含む遺伝子組み換えイネ、ゴールデンライスの試験ほ場が今年フィリピンで破壊された件については、批判の声が高かったようです。

 「感情による反対を変えるには、大義名分を押し出すべきだ」。こんな結論にそうかも知れないと思った次の日、日経バイオテクONLINEに次の記事が掲載されました。

Elsevier社、Food and Chemical Toxicology誌からMonsanto社の組み換えトウモロコシの発がん性に関する論文を取り消すと発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131201/172625/

 取り消しの理由は、不正行為やデータの改ざんによるものではなく、結論を導き出すためにはサンプルサイズが小さすぎたと判断したからだそうです。

 「やっぱり地道なデータの積み上げも必要だなあと思った」なんていう、ありきたりの結論ですみません。しかし、セミナーの会場で出された遺伝子組み換えパパイヤを食べながら思ったのは、どうしてiPS細胞はWelcome一辺倒なのだろうかということ。この技術も実用化が進んで行くに従い、懐疑論が出現して来るのでしょうか、原子力や遺伝子組み換えのように。そうならないために、パブリックアクセプタンスを視野に入れた育て方が重要だなんてことは、関係者は十分承知でしょうが、我々メディアも自戒を込めて。

                       日経バイオテク編集長 関本克宏

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