米エネルギー省(DOE)傘下のSandia National Laboratories(Sandia国立研究所)は2013年11月18日、DOEのAdvanced Research Projects Agency-Energy(ARPA-E:先進研究計画局)から3400万ドルの助成金が出ているプロジェクトの一環として、Sandia研究所のもつたんぱく質発現、酵素工学およびハイスループット・アッセイの専門知識を活用して、天然ガスを輸送用液体燃料に変換するバイオ触媒技術を開発するプロジェクトを開始すると発表した(関連記事)。

 このARPA-Eプログラムは「REMOTE」(Reducing Emissions using Methanotrophic Organisms for Transportation Energy)と呼ばれるもので、メタン資化性菌(methanotroph)を活用してメタンから液体燃料を生産するプロセスを開発する15件の異なるプロジェクトから成る。Sandia研究所はセントルイスにあるMOgene社の100%子会社であるMOgene Green Chemicals社と共に2年間の助成金を受け、太陽光を使ってメタンをブタノールに変換するプロセスの開発を目指す。MOgene社はこの微生物についての豊富な経験を提供し、Sandia研究所は酵素工学や遺伝子組み換え能力を提供する。

 このプログラムの大きな目標は、輸入に頼らない別のエネルギー源を米国内にもつことで、従来の化石燃料よりも一酸化炭素の排出量を低減させるようなエネルギー源の開発を目指している。

 Methanotrophsはメタンを資化することができる微生物で、メタンを代謝して他の物質に変換することのできる代表的な生物である。このプロジェクトのゴールは、メタン資化性菌の代謝経路をブタノールを生成することができる別の微生物ホストに組み込むことであるという。ブタノールは内燃機関の燃料として使用することができ、エタノールと共に輸送用エネルギーとして最良のバイオ燃料オプションの1つとして考えられている。

 Sandia研究所のバイオ燃料・バイオマテリアル科学技術グループのマネジャーであるBlake Simmons氏は「非石油由来の炭化水素の必要性は、特に航空機エンジンやディーゼルエンジンにおいてますます増大している。しかし天然ガスがこのままの状態では、これらエンジンでは容易に燃焼できない。またいくつかの内燃エンジンでも同じことが言える。ちょうどバイオマスをドロップイン燃料として使用するには変換が必要になることと同じように、天然ガスも液体燃料として有効に使用されるには、特別な変換をする必要がある」と説明する。

 「バイオマスは自然界に存在し、低コストで低炭素の国産燃料に変換されるが、このプロジェクトではインプットとしてバイオマスではなく天然ガスを使用する」とSimmons氏は話す。地中から抽出される天然ガスは再生可能ではないが、DOEにとって、また米国のエネルギー供給にとってますます重要な役割を果たしている、とSimmons氏は指摘する。

 微生物を使って天然ガスを輸送用液体燃料に変換することは目新しいテーマではない。自然界には天然ガスを代謝して生き残り増殖する多くの生命体が存在し、これまでこの生物に対して多くの研究が行われてきている。しかしながら、これら生物は適合したユニークな環境に存在し、典型的に代謝が非常に遅いという問題がある。このARPA-Eプロジェクトでは、自然界に存在する状態を改善し、新しく効率的な代謝経路を構築してプロセスのスピードを上げ、商業ベースに乗る速さと規模でガス状原料を変換できるプロセスの開発を目指す。天然ガスのようなガス状のインプット原料をブタノールに変換する生物学的方法は、これまでのところまだ確立されていない。

 Sandiaの研究チームは、これらメタン資化性菌の中核となる代謝を探求し、遺伝子工学手法により自然界に存在する微生物を改善して反応を速くさせるか、あるいはこの微生物から代謝経路を産業的により有用な他の微生物に組み込むことを考えている。過去、研究コミュニティーはこの問題に取り組んだが余り成功しなかった。しかしSandia研究所はこの数年にわたって開発された様々なツールや膜たんぱくについての研究成果を蓄積しており、研究開発の成功に自信を見せている。

 Simmons氏は「Joint BioEnergy Institute(JBEI)での研究活動を通じて、Sandia研究所は発現が難しいたんぱくを発現できるその能力を証明してきた。目的を実現するのは簡単なことではなく、研究コミュニティーにとって複雑な科学的挑戦であるが、Sandia研究所にはそれを実現するための蓄積された経験と能力がある」と語っている。

 Sandia国立研究所は、米エネルギー省のNational Nuclear Security Administration(国家核安全保障庁)の傘下にある複数のテーマを追求している研究所で、Lockheed Martin社の100%子会社であるSandia社が管理・運営している。ニューメキシコ州Albuquerqueとカリフォルニア州Livermoreに中心となる施設があり、国家安全保障、エネルギー・環境技術、経済的競争力の分野での研究開発を担っている。