2型糖尿病治療薬の追加・切り替え時に、今、米国で一番処方されているブランド薬がカナグリフロジンだそうです。11月1日の田辺三菱決算説明会の資料にそうありました。カナグリフロジンは田辺三菱がヤンセンファーマシューティカルズに導出したSGLT-2阻害薬ですが、今年3月にFDAに承認されると、あっという間にDPP-4阻害薬シタグリプチンを抜き去りました。日本でも、3月にイブラグリフロジンとダパグリフロジン、4月にルセオフリグロジンとトホグリフロジン、5月にカナグリフロジン、10月にエンパグリフロジンが承認申請され、今後、SGLT-2阻害薬が一気に発売されると予想されます。

 このSGLT-2阻害薬は、血糖値が正常であっても尿に糖が出る疾患、腎性糖尿の研究から生まれたことはよく知られています。SGLT(sodium-dependent glucose transporter)遺伝子に変異がある遺伝性腎性糖尿では原尿からの糖の再吸収が低下していることから、SGLTを阻害すれば糖が排出されるだけになり血中の糖を減らせるのではないかと考えたわけです。難病の研究がブロックバスターの誕生につながったのです。

 一方、シーケンサーの普及により、疾患に関連する遺伝的要因を網羅的に探索するゲノムワイド関連研究(GWAS)による遺伝性疾患の解明が進んできました。しかしながら、これまで数多く見いだされたのはアレル頻度の高い1塩基多型で、これらは疾患に与える効果が小さく、病因・病態の全貌を解明するまでには至りませんでした。頻度が希でも、疾患に与える影響が大きな遺伝的要因の探索が求められていたのです。

 それが次世代シーケンサーの実用化により可能になりました。今後、希少疾患における遺伝的要因の解明により、新しい治療法の開発が進むと期待されます。

 実際、今年6月には、東大神経内科の辻省二教授らの国際共同大規模ゲノム解析により、人口10万人当たり10人程度と頻度の低い孤発性疾患である多系統萎縮症の発症に関わる遺伝子が同定されました。このCOQ2遺伝子はこれまで多系統萎縮症の発症メカニズムとして全く予想されていなかったものであり、コエンザイムQ10を生合成するために必須な酵素の遺伝子であることから、治療法の実現可能性が高いと期待されています。

 そしてこれからは……宣伝です。

 日経バイオテクは12月3日(火)に、「希少疾患・難病の治療薬開発におけるゲノムの活用」と題したセミナーを、東京の秋葉原コンベンションホールで開催します。

http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/131203/

 共催者の日本PGxデータサイエンスコンソーシアムは、遺伝子解析を通じて日本人の副作用の原因を解明し、安全性・有効性の高い薬剤を開発することを目的に国内の製薬企業6社により設立され、健常な日本人3000人のDNAデータベースを構築しています。2011年には健常人コントロールと副作用発症群とのケースコントロール研究により、アロプリノール服用によるSJS/TEN発症に関係する遺伝子としてBAT1、HCP、MICC、PSORS1C1遺伝子を同定しました。

 セミナーでは、これからの治療法開発の道筋について議論されます。ぜひご参加下さい。

                       日経バイオテク編集長 関本克宏

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