「一粒の麦もし地に落ちて死なずば、ただ一つにてあらん、死なば多くの実を結ぶべし」(ヨハネ伝第12章24節)。これはキリストが自己犠牲によって、人々を幸福にする道を示した言葉ですが、北海道では一粒のイチゴが、農業の工業化、あるいは農業による医薬品・動物薬の生産という技術革新を実現させました。実用化を推進した産業総合技術研究所の研究者は、ここ7年間たった一編の論文を書いただけで、後は植物による薬品のGMP生産システムの実用化に邁進しました。研究者としては偉大な自己犠牲を払いました。が、彼らの献身こそが世界で初めての組み換え植物体による動物薬の製造と販売認可を取得、今後の植物個体によるバイオ医薬、ワクチン、動物薬、工業用酵素、診断薬などを工業的に生産できる技術突破・規制制度突破を実現しました。産学連携やトランスレーショナル研究を標榜しながら、実際の商業化には無関心で、論文執筆ばかりや形だけの特許申請が本音である、大多数のわが国の大学と国立研究機関の研究者には彼らの爪の垢でも煎じて飲ませたい。これからTPPの荒波に洗われる我が国の農業を、この一粒のイチゴが投じた技術革新の波によって乗り切るためにも、皆さん、決して無関心ではいられません。

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