こんにちは。毎月第1金曜日と第3金曜日、第5金曜日の日経バイオテクONLINEメ ールの編集部原稿を担当しております日経バイオテクONLINEアカデミック版編集長 の河田孝雄です。

 2週間ぶりでお目にかかります。2週間前は、アディポネクチンとゲノム編集の話題をお届けしました。今回は昨日、横浜市の京浜東北線JR新杉田駅が最寄りであるIHI横浜エンジニアリングセンターで見学発表会がありました藻類ジェット燃料の話題を紹介します。

[2013-11-1]
日本オリジナル「adiponectin」とボディマッピング、
ゲノム編集でCRISPR大躍進【日経バイオテクONLINE Vol.1956】
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131101/171882/

[2013-11-15]
IHI NeoG Algaeが燃料用藻類を屋外安定培養、商標「MOBURA」で油を用途開発
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131115/172265/

 藻類を培養して液体油を生産し、飛行機のジェット燃料に利用する取り組みが国内外で活発に進められています。陸上を走る自動車などは、電気や水素で走る比率が今後高まるので、液体燃料の重要性は低下します。しかし、大空を飛ぶ飛行機の燃料は、単位重量当たりの出力が大きい駆動力が必要であり、エネルギー源は、単位重量当たりのエネルギー密度が高い液体燃料が引き続き重要と考えられています。ジェット燃料に利用できるにはいろいろと物性的な制約が大きいので、ジェット燃料はガソリンよりも付加価値が高い。なので、藻類で生産する液体燃料の用途は、ガソリンではなく、ジェット燃料です。

 前にも指摘したことですが「エネルギー収支がどれだけプラスなのか」を見極めることが大切です。原子力発電所を増強して電気の生産量を増やし、電気エネルギーをジェット燃料という液体燃料に変換する、という方策は3.11前でしたら選択肢の1つだったかと思いますが、今の日本の現状は違います。

 整理するのに、0次エネルギー、1次エネルギー、2次エネルギーといた呼び方が良いのではと思います。太陽光は0次エネルギー。太陽光を利用してエネルギー収支プラスで生産する藻類燃料は1次エネルギー、(1次エネルギーの)糖類を用いて藻類を増やした(=エネルギー収支がマイナスの)藻類燃料は2次エネルギー、という分類です。

 北南米のように広大な陸地で膨大なバイオマス原料を低エネルギーコストで確保できる場合は、糖類も太陽光と近くなり、0.5次といってもよいのかもしれませんが、日本は決してそうではありません。

 「日経バイオ年鑑2014」の編集作業をしていて改めてなるほど、と思ったのですが、広大なブラジルでも、収穫した農作物の運搬にかかる費用の関係から、相対的に付加価値の高いダイズの栽培は急拡大している一方で、付加価値が低いトウモロコシはそれほど拡大していないとのことです。この場合のコストはお金ですが、燃料の場合は、エネルギーコスト(エネルギー収支)が一番重要なチェックポイントです。

 太陽光も利用して藻類で太陽光エネルギーを液体燃料に変えたつもりが、実のところエネルギー収支がマイナスでは、日本をはじめとする多くの国・地域にとっては、エネルギー政策上で意味が無いと考えます。

 いずれにしましても、エネルギー収支のプラスを増やすための取り組みで重要なのは、藻類の育種です。カルタヘナ法に抵触せずに精密に分子育種できる新技術の発展に期待しています。

 ただいま日経バイオテクの特集記事をとりまとめ中です。

[2013-10-28]
広島の第3回ゲノム編集研究会に200人、広島大と徳島大の副学長があいさつ、
学会発足へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131028/171689/

           日経BP社 医療局 先進技術情報部
           日経バイオテクONLINEアカデミック版編集長 河田孝雄

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