皆さん、お元気ですか。

 この週末は野球、野球で盛り上がりました。東北楽天、初の日本シリーズ制覇、おめでとうございます。まだ25歳なのに大投手のオーラを発する田中投手が第6戦敢闘したにも拘わらず、常識外の連投で、第7戦の9回のクローザーとして登場、なんとか逃げ切りました。まったく感動させる展開です。得点は3:0でリードした状況でした。1点差だったら「田中は出さなかった」と星野監督。まったく正直です。これで田中投手は思いを残さず、海外で勝負できると思います。移籍金100億という数字が踊っておりますが、これだけの投資ができれば、過酷な冬に直面する仙台でも、田中選手の後継者を育てるインフラの整備が可能となります。彼のためにも、楽天のためにも、この挑戦は意味があると考えます。

 11月から宮田満が執筆するメールと記事(バイオのキーマンのインタビューなど)を有料化する新サービス(課金)を開始いたしました。日経バイオテクONLINEメールは、全文をメールでお読みいただく方式から、一部だけメールでお読みいただき、残りはWEBサイト「Webmasterの憂鬱Premium」でお読みいただく方式に変更いたします。また個の医療メールは日経バイオテクONLINEメールに衣替えして、毎週木曜日に送信いたします。サイトの閲覧には、会員登録が必要となります(日経バイオテクONLINEの会員の方は、同じIDとパスワードでログインが可能です)。毎月第1月曜日は従来通り、メール全文がお読みいただけます。このメールは全文無料でお読みになれます。持続的に皆さんに質の高いバイオニュースやビジョンを提供するために、誠に厚かましいお願いで恐縮ですが、新しいビジネスモデルに是非ともご賛同、ご協力願います。以下のサイトで、今まで執筆した記事をお読みいただけます。
https://bio.nikkeibp.co.jp/wm/

 さて、バイオです。

 その前に、本日、「理想の臨床研究・試験とは? ディオバン事件調査報告を受けて」をテーマにウェブ上で20人のがん専門医と法律関係者が討議した3コンセンサスエンジン合同討議の議事録とコンセンサスを公開しました(医師限定)。どうぞ下記のサイトからアクセス願います。
〇コンセンサスエンジン(上から、消化器がん、乳がん、肺がん)。
どのサイトからもアクセスできます。
https://bioce.nikkeibp.co.jp/consensusengine/
https://bioce.nikkeibp.co.jp/breastcancer/
https://bioce.nikkeibp.co.jp/lungcancer/

 本日(2013年11月5日)、第185回臨時国会で衆議院本会議に薬事法改正案と再生医療等の安全性の確保等に関する法律案(再生医療新法)が上程され、可決される見通しです。可決後、参議院に送付されますが、この2つの法律が成立し、来年の4月か、6月には施行されることが確実となりました。これによりわが国でも、再生医療の実用化と医療としての安全確保の基盤が整備されることになります。実は海外からもこの両法案は熱い注目を浴びており、再生医療関連企業やベンチャー企業のほとんどがこの3カ月の間に日本を訪問するほど、日本ブームが過熱しております。先月、横浜で開催されたBioJapan2013でも海外の再生医療ベンチャーの姿が目立ちました。政府が明快な方針を示し、具体的な法案として動き出すことで生じる、世界に与えるインパクトを感じております。アベノミクスを空騒ぎに終わらせないためにも、正しい再生医療の実現に努力しなくてはなりません。さしあたり急ぐべきは、患者や医師に対する再生医療の正しい情報提供というか、教育ではないでしょうか? 似非再生医療にすがりつく医師や患者が残っていては、悪貨が良貨を駆逐することになりかねません。そのためにも、法案成立を受けて、厚労省の政省令の整備が重要になります。

 しかし、これが一筋縄では参りません。研究段階では再生医療はヒト幹細胞を用いる臨床研究指針(ヒト幹指針)で規制されてきました。しかし、これはあくまでも義務付けではなく自主規制に過ぎません。これを再生医療新法の下、政省令化することが存外難しい。問題の第一は、再生医療新法は研究から医療まで一貫して規制対象とし、罰則規定もある刑法であることです。医療と研究ではおよそ患者や被験者の安全確保のレベルや手続きが異なるのですが、ここを終始一貫させなくてはならない苦労が大きいのです。例えば法律の中で、これは医療、これは研究とかき分けることもままなりません。また、仮に研究だけに限ってかき分けても、この立派な法律に、〇〇に関することはヒト幹細胞指針に従うこと、とは書けない制限があります。国会の審議を経て成立した法律はガイドラインよりも遥かに重く、単なる官庁の委員会で決められたガイドラインを引用する訳にいかないという手続き上の問題があるためです。という訳で、現在、厚労省は3つのワーキンググループを編成して、政省令化を急いでおりますが、まだまだ相当な議論が必要なのです。法律が通るからといって、実際、わが国にどんな再生医療が生まれるのかは、すべからく厚労省が現在汗をかきかきまとめようとしている政省令にかかっているのです。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/iryousaisei01/pdf/01.pdf

 ここ3か月間にわが国を訪れた再生医療ベンチャー企業が、皆帰国後に訪ねたのはGMP基準で細胞受託製造するスイスLonza社でした。その担当者曰く「各社皆、言っていることが違う。一体、日本の再生医療のほんとうのところはどうなっているのだ?」。日本はまったく不可解だというのです。これは日本の行政機構と法律に従う米国の行政機構の差とも言えるでしょう。来年の春までに厚労省の再生医療に関する政省令が定まれば、世界の誰もが、こんなことだったのか? と理解できるはずです。国会審議も重要です。再生医療新法は付帯決議で補わなくては、法律としては穴が空いているという識者もおりますが、本当に皆さんの再生医療の事業化を決めるのが、厚労省の政省令であることだけは、是非とも忘れないでいただきたい。日本に住みながら、国際競争に曝されている皆さんの唯一のメリットがこのわかりにくさかもしれません。

 先月末、米国食品医薬品局が「Paving Way to Personalize Medicine」という報告書を発表しました。ここ10年の製薬産業にとって成長の鍵を握る個の医療へのビジョンをまとめたものです。今朝ほど知ったばかりなので、詳しい分析は木曜日に解説させていただきます。しかし、個の医療にはFDAも本気ですね。
http://www.fda.gov/downloads/ScienceResearch/SpecialTopics/PersonalizedMedicine/UCM372421.pdf

 加えて、米Genentech社が慢性リンパ性白血病の治療薬として抗体医薬「Gazyva」 (Obinutuzumab)を米国で販売する認可を2013年11月1日に獲得しました。この抗体はヒト化抗体とやや古くさい製剤ですが、糖鎖のヒンジの部分のアミノ酸配列を改変した抗体誘導体です。これによって先行したキメラ抗体「Rituxan」(Rituximab)より、抗がん作用が強く、アポトーシスの誘導作用も増強されています。昨年5月に協和発酵キリンが発売した「ポテリジオ」に次ぐ、糖鎖改変抗体の実用化です。私がカウントする限り、46番目の抗体医薬の商品化であります。わが国では中外製薬が日本新薬と提携して、商品化を急いでおります。

 どうやら完全ヒト抗体から、抗体誘導体開発へと商品化の焦点が移行しつつあるようです。抗体誘導体技術は協和発酵キリンのみならず、中外製薬なども世界をリードしており、ここ20年、ビッグファーマや海外のバイオベンチャーの後塵を拝していたわが国の企業も、抗体誘導体でリベンジできる可能性があります。諦めずに着々と次の手を打った企業が、次世代抗体のイノベーションの波に乗れるのです。皆さんも、是非、目前のことだけでなく、10年先を見て、今、手を打って頂きたい。

 今週もどうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/