「バイオテクノロジー関連のベンチャーキャピタリストの中には、公開された研究の半分は再現できないという経験則がある」 「昨年Amgemが行った調査では、がん領域における53の“landmark”studyのうち、再現できたのは6つに過ぎなかった」

 The Economist誌10月19日号に掲載された記事、「How science goes wrong」の中にあるこの記述は、ちょっと刺激的でした。

Problems with scientific research How science goes wrong
http://www.economist.com/news/leaders/21588069-scientific-research-has-changed-world-now-it-needs-change-itself-how-science-goes-wrong

 今のアカデミアは、見かけ倒しの実験やお粗末な分析による知見に満ちあふれているとするこの記事は、その原因を研究者の職を巡っての競争にあるとしています。つまり、研究ポストを得るためには論文発表が必要で、人目を引く発表ほど掲載される可能性が高くなり、そして他の研究者の成果の検証は業績になりにくいため、疑わしい研究結果が生き続けるのだというのです。

 この記事を読んでまず頭に浮かんだのが、UMNファーマの道下前社長へのインタビューでした。

UMNファーマの道下社長に聞く、
「バイオ医薬品にこだわったベンチャーとして成長していく」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130412/167376/

 ここにはこんな発言があります。「最初は大学のシーズを導入して開発するのを基本的な戦略としていた。……2年間やってみたが、これらはうまく行かなかった。……大学から出てくるデータには信頼性が欠けることがしばしばあった」。以前、この話をメールマガジンに書いたところ、それはいわゆる“死の谷”の問題だろうという指摘をいただいたのですが、もっと根源的なものだったのかも知れません。

 またEconomistの記事では、2000年10年までに8万人の患者が、後に誤りや不適切さにより撤回された研究に基づいた臨床試験に参加したとも指摘しています。これは言うまでもなく、日本における一連の降圧試験を想起させます。

 記事では、「壊れているなら直せ」として、研究プロトコルの登録・公開や、学術誌が“uninteresting”な研究も掲載すること、グラントを与える側もそのような研究に資金を出すことなどを解決策として挙げています。

 先日のメールマガジンでも紹介した、BioJapanで開催されたBaNZaIのセッション「ベンチャーキャピタリストが俯瞰する次世代バイオ業界エコシステムのヒント」でも、Scienceの再現性や信頼性で劣り失敗するケースが多いため、シーズ単品には投資しないことが挙げられていました。その一方で、アーリーフェーズのものの中から、ぱっとしないように見えても有望なものを見逃さないようにすることの重要性も指摘されました。ここでも紹介されたファンド「OiDE」は、大学の研究成果という超早期段階のシーズを育成するために「早い段階から製薬会社に関与してもらう仕組み」だそうです。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20131008/171326/

 産学連携が進むことで、アカデミアも変わって行くのでしょうか。

 ところで、今注目のバイオベンチャー、Acucela社の窪田良さんの活動が、27日の日曜日にTBSで放映される「夢の扉+」で紹介されます。
http://www.tbs.co.jp/yumetobi-plus/future/

 予告を見ただけでワクワクしてきました。本編が楽しみです。

                      日経バイオテク編集長 関本克宏

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