こんにちは。第2、第4金曜日を担当する日経バイオテク副編集長の河野修己です。

 昨日は楽天の初優勝のシーンに見入ってしまいました。もちろん田中将大のような超弩級の戦力に恵まれたという運はあると思いますが、約10年の雌伏の時期を耐えた古参の選手やスタッフの団結力は賞賛されるべきでしょう。

 私にも経験がありますが、スポーツにせよビジネスにせよ組織は栄枯盛衰を繰り返すもので、いったん谷を迎えると次の山に達するまでに5年、10年かかるのは当たり前です。山になるまでの時間が我慢できない構成員が多いと、山を見ることなく組織が瓦解したりしますね。

 ところで、プロ野球の優勝胴上げに親会社のトップがしゃしゃり出てくるようになったのはいつからでしょうか。昔は背広組がグラウンドに降りてくることはなかったと思うのですが。ソフトバンクホークスが優勝した時も、孫社長が胴上げされて喜んでいましたね。あそこで胴上げされる権利があるのは、共に戦った仲間だけでしょう。

 オーナーが出てくれば監督・コーチ・選手は拒否できませんよね。やりたくないことをやらされているように見えて、なんだかいやーな感じです。こういう行動を恥ずかしいと思うような細かい神経を持っていては、ベンチャーを大企業に育て上げるような偉業は成し遂げられないのでしょう。

 さて、最近、「破綻、バイオ企業・林原の真実」という本を読みました。著者は同社の創業家出身で専務取締役を務めていた林原靖氏です。

 林原は食品・医薬品原料の製造販売を主力とする岡山の地場企業で、マルトースやインターフェロンの独自製造技術を確立するなど超優良のバイオ企業とみられていました。しかし、損益は黒字にもかかわらず、2011年2月に突然、会社更生法を申請して経営破綻してしまいました。現在は長瀬産業の子会社になっています。

 当時、私は担当外だったこともあり何が起こっていたのかよく分からない部分もあったのですが、この本を読んでようやく理解できました。

 林原は融資残高について取引銀行に虚偽の報告を行っており、それをつかんだ複数の銀行が林原の債務超過を疑い融資を引き上げようとしたことが破綻のきっかけとなったのです。林原氏は著書の中で、「会社更生による弁済率は93%で、実質的には債務超過ではなかった」「銀行は自分たちの利益のためだけに動いた」などと批判していますが、この破綻は明らかに経営の失敗です。

 林原の売上高約350億円に対して借入金は約1300億円。銀行団がその気になれば即座に経営が立ち行かなくなるほどの借金をしておきながら、なぜ会計上の瑕疵を放置しておいたのか。林原氏は「借入金額の差異は毎年縮小していた」と書いていますが、これは徐々に解消するものではなく、把握した時点で打ち明けて一気に解決しなければ、銀行側が厳しい態度に出るのも当然でしょう。会計事務所や顧問弁護士など、的確なアドバイスをしてくれる人がいなかったのでしょうか。

 もし林原が上場企業だったら、時間のかかるバイオ関連の独自技術の開発にそれほど投資できず、美術品収集などのメセナ活動もそれほど大規模にはできなかったかもしれません。しかし、会計上の瑕疵がここまで放置されることもなかった可能性が高いはずです。同族非上場による経営の悪い面が出てしまった例に思えます。