皆さん、お元気ですか。

 まずは宣伝から、昨年のバイオバンクのセミナーを受けて、10月2日、クリニカル・バイオマーカーのセミナーを開催いたします。是非とも、皆さんにはご参加いただきたい。すこし研究すれば判りますが、バイオマーカーらしい分子や分子プロファイルは簡単に見つけられます。しかし、本当にこれが臨床現場で、患者さんの治療や副作用の抑止に貢献できるのか?今回のセミナーでは、数多報告されたバイオマーカーの中から、患者の選択や新薬の評価に活用できる真のバイオマーカー(クリニカル・バイオマーカー)をご紹介します。この成功経験から、医療イノベーションを前に進めるエンジンを明らかにしたいと考えています。皆さんのご参加を心待ちにしております。以下より詳細にアクセスの上、お早めにお申し込み願います。
http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/131002/index.html

 台風一過で、東京は秋色を深めています。今朝は20℃を割り込むすがすがしさでした。 欧州でも今晩からチャンピョンズリーグの一次リーグが始まります。欧州の国内リーグの上位者が競う、チャンピョンズリーグはオリンピックやワールドカップなどの国別の対抗試合とは一味も二味も違う、世界最高のメンバーが揃う、最高の戦いです。国籍によるメンバーの制約やナショナリズムの呪縛から離れて、最高のサッカーを追求する究極の戦いです。昨年は、ドイツのクラブチームが優勝と準優勝を独占、モダンサッカーでのスペイン絶対優位の牙城を崩しました。今年はアルゼンチンのメッシに、ブラジルから招いたネイマールを加えたバルセロナが、ドイツの壁の突破を狙い意欲満々です。今晩はオランダのアヤックスとの緒戦を戦います。どうなりますやら、また眠れぬ夜が訪れそうです。

 さて個の医療です。

 昨日は、米国でフェーズIII臨床試験着手が決まった抗RNAウイルス剤、T-705の開発者の一人である富山大学医学部ウイルス学教授白木公康教授に取材して参りました。インフルエンザやデングなど幅広いRNAウイルスの増殖阻害効果があり、しかも薬剤耐性株の出現がほとんどない、極めて優秀なRNAウイルス阻害剤が何故誕生したのか?興味津々でした。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130910/170784/

 驚いた事に、富山大学医学部の前身である富山医科薬科大学が精力的に展開していた漢方薬の研究が、T-705のスクリーニング系開発の下敷きになっていたのです。実際には阪大から移籍した白木先生が、風邪薬として今でも使われている葛根湯の分子メカニズムの解明を行った知識が、T-705のスクリーニングに活用されました。実際には、富山化学が合成した3000種以上の化合物ライブラリーを、まずは細胞でスクリーニングして、抗ウイルス作用があるものを一次スクリーニングしました。二次スクリーニングは、フェレットとマウスの2種の動物を使い、2種に対してインフルエンザなどに抗ウイルス活性を発揮した化合物を選択しました。抗ウイルス活性に種特異性がない化合物ほど、ヒトに効果を発揮する可能性が高まるためです。T-705はRNA合成酵素阻害剤ですが、詳細な作用機構、つまりどうやって合成阻害をするのかはまだ研究中です。分子標的に対するスクリーニングではなく、フェノタイプ(ウイルス増殖)によるスクリーニングによって得られたのがT-705と言えるでしょう。

 個の医療ですが、実は皆さんの歯磨きの程度によって、インフルエンザウイルスの罹患リスクが変わってしまうことを白木教授より教わりました。感染細胞から放出されるインフルエンザウイルスは未成熟で上気道の細胞に感染性をそれだけでは持っていません。感染性を獲得するためには、トリプシン様たんぱく質分解酵素によって、ウイルス粒子の表面に存在するノイラミニダーゼの前駆体たんぱく質が切断される必要があるのです。上気道に存在するクララ細胞がそのたんぱく質分解酵素を分泌していますが、実は口腔細菌もトリプシン様たんぱく質分解酵素を分泌しているのです。従って、口腔内の衛生管理を怠ると、口腔内で成熟インフルエンザウイルスが誕生し、インフルエンザに感染し易くなるという訳です。

 感染症ですら、個人のライフ・スタイルによって、感染性が変わってしまうのです。個の医療の重要な視点で有ると思いました。

 歯磨き励行。小学校の時から口うるさく言われた意味が分かりました。皆さんもインフルエンザシーズンに備えて、歯磨きいたしましょう。

 今週もどうぞ皆さんもお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/