こんにちは。第2、第4金曜日を担当する日経バイオテク副編集長の河野修己です。

 8月末に日本臨床腫瘍学会(JSMO)を取材してきました。今年のJSMOでは、がん治療ワクチンの医師主導治験だけをテーマにしたセッションが設定されていたので、最初から最後までじっくりと拝聴してきました。

オンコセラピーのがん治療ワクチン、複数の医師主導治験が臨床腫瘍学会で報告
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130901/170640/

 7つのプロジェクトが進捗状況などについて発表を行いましたが、すべて厚生労働省の「難病・がん等の疾患分野の医療実用化研究事業」(がん研究分野)に採択されているプロジェクトです。つまり、これらの医師主導治験は、厚労省の競争的資金を得たからこそ開始されたものなのです。

 さて、各発表者が治験の進捗状況を報告するのは当然として、このセッションの参加者が異口同音に訴えていたのが支援の継続です。実は同研究事業は2011年度の開始で、今年度で3年間の実施期間が終了します。

がんペプチドワクチンの医師主導治験、厚労省による支援継続は確約されず
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130909/170776/

 例によって、競争的資金の採択が正式に決まるのは年度の後半です。そこから治験薬の準備や規制当局との相談、プロトコルの決定などをこなさなければならないのですから、急ぎに急いでも患者登録が始まるのは2012年後半になってしまいます。患者登録にもう1年かかるとすると、経過観察の時間が十分に取れません。2年半では治験を完了させるのは困難なのです。

 がん治療ワクチンの治験で経過観察を続けようとすると、画像診断や血液検査などに費用がかかります。データ管理の外部委託費用も必要です。医師主導治験ではこれらの費用を、医療機関が負担しなければなりません。もし同研究事業の終了と共に治験の支援が打ち切られてしまえば、十分な体制での治験継続ができなくなるプロジェクトが出てくるのは目に見えています。

 しかし、本誌の取材では、2014年度以降も支援が継続されるかどうかは不透明な状況です。同研究事業はがん治療ワクチンの実用化促進を目的としています。実施されているのはフェーズIで、これ以降の開発は製薬企業への橋渡しを意図しているはずです。そうした目的を達成するには、せめてフェーズIは完了させなければなりません。途中で終了してしまえば、わざわざ補助金を付けて医師主導治験を開始した意味はありません。厚労省には、同研究事業の支援対象となっている各医師主導治験をきちんと完了させる責任があります。