皆さん、お元気ですか。

 現在、科学技術振興機構でイノベーション創出人材の評価委員会にどっぷり浸っております。イノベーションを創出するような若手をどうやったら教育できるのか?これは永遠の課題ですが、わが国の国民を幸福にする人材の育成は、どうしても挑戦しなくてはなりません。

 さて個の医療です。

 今回は個の医療という訳ではありませんが、9月2日に開催された厚生労働省のディオバン問題の第二回調査会に出席した所感を申し上げたいと思います。

 調査会は厚労省の会議室で行われました。傍聴者と関係者を合わせて180人近くが詰め込まれた会議室は午後8時に冷房が切れ、そしてまさに我慢比べの様相を呈しました。ノバルティス社のヒアリングで質問が殺到、審議時間は1時間以上延長し、9時過ぎに終わりました。ノバルティス社の報告と京都府立大学と東京慈恵会医科大学の調査報告には、今回の調査委員会でも埋まらない溝が存在しました。中間とりまとめが予定される9月30日までの時間的な制約と法的な強制調査権を欠く調査委員会でどこまで肉薄できるか?最大限の努力をしなくてはなりません。

 本日はこうした調査の間で少しびっくりしたことがありますので、ご紹介いたします。

 それは京都府立医科大学も東京慈恵会医科大学も、ディオバンを使用したわが国最初の大型臨床研究を始めた動機です。両方の大学の調査委員会の委員長が口を揃えて、医局の新設や組織再編があったので「新たな医局の結束力を高めるため」と明言したことです。しかも何のためらいもなく。

 医局の結束を図るため、患者さんを対象に臨床研究を行うことについて何ら倫理的な疑問を持たない10年前、そして現在をもそうであろうわが国医科学系大学の深層意識を垣間見た気になりました。大学や研究者の、この倫理的な堕落が、第三者の意図的介入にわが国の臨床研究が極めて脆弱である最大の原因の一つであると感じました。

 利益相反。この言葉の真意は、産学連携による利益相反だけで議論されることも多いのですが、本来の意味は、本務と副次的な任務の間での利益相反です。今回の臨床研究の責任者となった医師の本務は、患者の治療と安全確保です。副次的な任務は医学研究で論文を書くことや産学連携による医薬や医療機器の開発や用途開発となるのです。産学連携に無関係な臨床研究でも、二重盲検試験でプラセボを投薬する時に利益相反が生じます。ここをまずきちっと押さえて、利益相反を議論しなくてはなりません。

 臨床研究は、患者さんを最終的には救うためのもので、断じて医局の結束を図るために行うことが許されるようなものではないのです。わが国の医師と医学研究者はまずこの根本を検証し、自らの心に一点の曇りのなきことを問う必要があると思います。

 これからも継続的に、皆さんに報告をしたいと思っております。

 残暑厳しき折、皆さんもどうぞご自愛願います。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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