皆さん、お元気ですか。

 日本のバイオ・医薬企業とICT企業、46社が都内で密かに集っている研究会でこのメールを書いております。今朝、日経新聞の一面で取り上げられたソニーも参加しているところが面白い。まだ、広報から確認の電話もないので、詳細は不明ですが、米Ilumina社とソニーが合弁企業を設立、わが国で受託遺伝子解析サービスを行うという主旨の記事でした。この流れは十分ありうる話しですが、ちょっと参入が遅れた感じも否めません。むしろ今では、巨大な塊となったヒト・ゲノムのビッグデータは大した価値を生じません。むしろ、この研究会で議論されている精密な臨床情報とマルチオミックスデータベースの組み合わせこそが価値を生む時代となっています。受託解析事業だけでは、中国のBGI社との競争に疲れ果てることが見えております。絞り込めば国際的にも質の高いわが国の臨床診断、その臨床情報をいかに継続的に収集し、連結可能匿名化により個人毎の解析を可能にしたデータベースこそがわが国の武器となると考えます。9月10日午後には東京国際フォーラムで医療関連データベースの充実と活用というシンポジウムが開催されます。これを見ると、わが国には問題はあるものの各種の充実した臨床情報・医療経済情報の蓄積があることが理解できます。むしろ、こうした基盤をどうやってバイオのデータとリンクするのかが課題です。
http://www.iken.org/

 一方、マルチオミックス解析による創薬を協力に推進する産総研創薬分子プロファイリングセンターの開所記念シンポジウムが、やはり9月17日に東京のイイノホールで開催されます。まさに盛り上がりつつある臨床情報のデータベースと、創薬分子プロファイリングセンターのデータベースを、がっちゃんこして次元の異なる創薬・健康データベースへ進化させる機運が、わが国にも充ちてきたと実験しています。

 今、やるしかないのです。
http://www.molprof.jp/info/event.html

 さて個の医療です。

 ゲノム研究の前に、正しい臨床研究であることは言うまでもありません。8月23日に、文科省と厚労省は合同で、わが国の主な臨床研究機関(161病院・大学)に対して、臨床研究の総点検を指示する4局長通知(文部科学省高等教育局長、文部科学省科学技術・学術政策局長、文部科学省研究振興局長、厚生労働省医政局長、25文科振第453号、医政発0823第2号)を出しました。回答期限は、9月17日午前12時です。2009年4月以降に始まった患者に対する侵襲性のある介入研究総てが対象です。

 自主点検として、データ捏造の疑いや不正行為がないかどうか?「研究活動の不正行為への対応のガイドライン」(平成18 年8 月8 日科学技術・学術審議会研究活動の不正行為に関する特別委員会)等を参考にまず点検することを要求しています。第二の点検は倫理委員会などで適正に、臨床研究倫理指針に基づく審査や運営が行われているか?そして最後には、利益相反の管理体制の確認です。「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」(平成18 年3月臨床研究の倫理と利益相反に関する検討班)及び「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針」(平成20 年3 月31 日科発第0331001 号厚生科学課長決定)等に基づいて、適正に管理されているか?報告を要求しています。

 きっとこれを受けた医療機関・大学は蜂の巣を突いたような大騒ぎとなっているに違い有りません。ディオバン事件がわが国の臨床研究の棚卸しに繋がったのです。臨床研究のインフラが2006年以降に急速のわが国でも充実してきておりますが、この過渡期に行われた臨床研究をきちっと精査して、少なくとも国が整備した臨床研究の指針の遵守が行われているのか?確認しようというものです。

 今まで、いい加減に対応してきた医療機関・大学はこの際に本腰を入れて調査し、対策を立てないと、臨床研究ができなくなる可能性もあります。そのためにも、今回の調査では是非とも、正直に不正や不十分な管理を報告して欲しい。一度、わが国の臨床研究は膿を出さなくてはなりません。私が取材した感触では、この調査がまとまった以降、不正隠しが判明したら、厚労省や文科省は相当厳しい対応を取る覚悟がありました。是非とも、この際に真摯に関係者は反省を行い、新しい臨床試験の公明正大な基盤を形成する一歩を踏み出しましょう。皆さんの良心に、私は期待しています。

 今週もどうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/