こんにちは。1週おきにこのメールを担当しております、日経バイオテク記者の増田智子です。

 先週は恐ろしく暑い一週間でした。盆休みの休暇中も、余り屋外に出ないようにしながら暑さをやり過ごしていました。

 少し古い話になってしまいましたが、休暇に入る前、8月9日の金曜日には「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」を取材しました。これはデバイスラグの解消のために2006年に設けられた厚生労働省の会議で、「国内で未承認または適応外の医療機器および体外診断用医薬品について、国内の医療ニーズが高いものを適応疾患の重篤性および医療上の有用性の観点から選定し、優先順位を付けて早期導入のための方策について検討」するもの。これまで60の品目を早期導入すべきものとして選定しています。9日の委員会では、新たに5つの品目が選定されました(CD34陽性細胞の標識・分離システム、経頭蓋反復磁気刺激によるうつ病治療装置、遊離メタネフリン測定キット、抗菌性脳脊髄用シャント、腫瘍治療電場システム、義眼台)。

 医療機器は当誌の守備範囲かどうか迷う製品もあるのですが、今回最も日経バイオテクのど真ん中だった製品は「CD34陽性細胞の標識・分離システム」。造血器腫瘍の患者に対するHLA適合性の低いドナーからの骨髄移植の際に、移植する細胞群からT細胞を除去し、移植片対宿主病(GVHD)を予防する、というものです。既視感があると思ったら、国立がん研究センターで実施中の、HSV-TK遺伝子導入Tリンパ球を用いたGVHDの遺伝子治療で使われている装置でした。正直言って、既に臨床現場で一般的に利用されているものとばかり思っていました。

 この他、磁気や電気で疾患を治療しようという機器が2つ。経頭蓋反復磁気刺激(rTMS)によるうつ病治療装置は、刺激コイルから磁界を発生させ、それにより頭蓋内に渦巻電流を誘導し、脳神経細胞を刺激するというもの。自由診療では導入しているクリニックは既にあります。腫瘍治療電場システムは、再発神経膠芽腫の患者の治療部位の頭蓋に電極を設置し、がんの周囲に交流電場を形成、がん細胞の増殖を抑制するというシステム。薬物医療の代替として用います。腫瘍細胞の周囲に交流電場を形成すると、分裂中期の微小管重合、終期の細胞小器官の泳動が阻害され、がん細胞が増殖できなくなるとのこと。ただし1日18時間、使用を継続する必要があります。がんの位置によっては使えないものの、副作用のために抗がん剤を使えない患者には新しい選択肢になるかもしれません。

 なお、最後の「義眼台」は、患者団体からの要望で同検討会の検討対象に上がった初めてのケースでした。この義眼台は「PMMA Eye Sphere」という製品で、米Gulden Ophthalmic社が発売しています。ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂で作られた球体で、直径10mmから22mmまで7サイズがあります。要望を提出したのは小児の網膜芽細胞腫の患者団体で、目的はがんのために眼球を摘出した小児に用いること。小児の時に眼球を摘出すると、顔面骨の均整のとれた発達が難しくなるが、義眼台を挿入して眼球の体積を埋め、成長に合わせて交換すれば問題を回避できます。PMMAの義眼台は外れやすい反面、血管が入らないので交換が容易なのだそうです。

 問題は、輸入してくれそうな企業がないこと。厚労省も検討会の時点では「当たりをつけている企業すらない……」と 途方に暮れているようでした。単価が安く(Gulden Ophthalmic社のオンラインカタログで1個42ドルからhttp://www.guldenophthalmics.com/products/index.php/spheres-conformers.html)、数が出る製品でもないので、商業ベースに乗せるのが難しいという袋小路に入ってしまっている模様です。「どこか引き受ける企業はないものか」という嘆息が検討会の委員から出ていました。ありませんか? なお、製造困難な製品には見えないことから、「日本企業ならすぐ作れるのでは」という意見も出ていました。

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                         日経バイオテク 増田智子