日本の研究成果を世界に発信するには【日経バイオテクONLINE Vol.1909】

(2013.07.17 19:00)
増田智子

 こんにちは。1週おきにこのメールを担当しております、日経バイオテク記者の増田智子です。

 日経バイオテク・オンラインに日々掲載されているニュースには、記者が自分で掘り起こして取材をして書いた記事と、企業や研究機関が出す記者発表(プレスリリース)に基づく記事があります。日経バイオテクは遺憾ながら海外支局を持たないので、海外の研究機関のニュースは一部を除き、プレスリリースに基づくもの(に、適宜記者が情報を追加したもの)です。毎日大量に発表される英文のリリースを読んでは、どれを日本語にするかを決めているわけですが、その中で気づいたことがあります。日本の大学・研究機関の英文プレスリリースが少ない。

 日本の大学・研究機関から、インパクトファクターが大きいジャーナルへの発表は、それこそ毎日のようにあるのに、英文リリースが無いのが残念でなりません。わが国の科学レベルを分かってもらえない、というのも悔しいですし、成果を出した研究者を売り込めないのももったいないことです。研究者は音楽家や野球選手と同じで、名前が売れていた方が国際的に就職が有利になります。また有望な若手を輩出している研究機関は、ポスドクや大学院生の人気を集めることとなり、評判も上がります。若手研究者の顔写真付きのプレスリリースを出す海外の大学・研究機関も多いのです。

 どうすれば英文でプレスリリースを出して、日本の研究機関と研究者の知名度を高められるか。おそらくハードルは(1)英文でリリースを書く(2)閲覧数が多いサイトに出す、の2つです。

 まず英文リリースの文章ですが、フォーマットがだいたい決まっており、その通りに書けば何とかなります。海外では研究機関がプロのライターを雇っているケースも多いのですが、日本では研究者が広報担当者と協力して何とかする、ことになるかもしれません。「英文プレスリリースの書き方」で検索をかけると、商業用の英文プレスリリースの書き方がたくさん出てくるので参考になります。

 リリースの内容については、海外の研究機関でもレベルが様々です。発見の内容だけでなく、研究の背景や実験段階の苦闘、研究者のコメントまでを網羅した詳しいものから、研究機関、研究チームの人名と研究資金の提供元以外は論文のタイトルと「疾患関連のシグナル伝達経路を発見しました」程度の情報しかないものまで(興味を持った人は論文を当る、と割り切れば、これはこれでかまわないのです)。また文章が短くても、静止画や動画で面白いものが出せれば、言葉の壁を超えることは難しくないと思います。

 次に、世界中の人にリリースを読んでもらう方策を考えなければなりません。作ったリリースは、大学や研究機関の英語版ホームページに掲載するのが最も手軽な方法です。ただ、日本の大学・研究機関が自らの英文ウェブサイトにニュースをアップしても、気づいてもらえない可能性があります。そこで、科学関連のプレスリリースを集めたサイトに投稿する、という選択肢があります。

 とりあえず、研究機関のプレスリリースがたくさん集まっているサイト、米国科学振興協会(AAAS)のEurekAlert(http://www.aaas.org/)に登録することを考えてみます。AAASで最も有名なジャーナルはScience誌ですが、このサイトはScience誌以外の雑誌に掲載された科学研究成果や学会発表もOK。バイオ、医療関係からIT、宇宙、社会科学まで、様々なジャンルの研究成果のプレスリリースが毎日大量に投稿されています。一般の人に研究成果を伝える、アウトリーチのためのウェブサイトであることから、閲覧は無料です。

 EurekAlertには「広報担当者(Public Information Officer;PIO)」のIDがあり、これを取得すればプレスリリースが投稿できるようになります。掲載に係る費用は、機関としてEurekAlertを購読(年間購読料1295ドル)している場合は無料、購読していない場合でもリリース1本当たり135ドル(大学・公的研究機関の場合 http://www.eurekalert.org/subscription.php?appstate=pnr)支払えば掲載可能、とのこと。この費用をだれが負担するか、という問題が出てきそうですが、広告費としてはさほど高くない、という見方もできます。なおPIOのID登録の仕方は http://www.eurekalert.org/help.php にあります。

 EurekAlertは、ジャーナリストに対しては、論文の公表前にリリースを読むことを可能にする、などの支援があり、各国の報道機関のニュースソースになっています。海外の通信社や新聞社の興味を引ければ、どこかの国でニュースとして配信されるかもしれません。

 ご意見、ご批判は以下のフォームよりお願いします。

 https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/
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