皆さん、お元気ですか。

   ワールドカップ・ブラジル大会の予選最終試合も、相変わらずじりじりさせられましたが、無事勝利で締めくくり、6月15日からブラジルで始まるコンフェデレーションズカップ大会に弾みをつけました。15日の緒戦がいきなりブラジルと当たりますが、本当に現在のA代表がワールドカップで優勝を狙える位置に到達しているのか?重要な試金石となります。

 さて個の医療です。

 本日(2013年6月12日)に、BRCA1と2の遺伝子検査サービスを行っている臨床検査ラボの親会社であるファルコSDホールディングスが、記者発表を行いました。アンジェリーナジョリーの告白以来、我が国でも関心が深まっているBRCA1と2の遺伝子変異解析による乳がんの罹患リスク分析を提供している企業ですが、余りに騒ぎが拡大し、一部にはファルコが医療機関に対してBRCA1と2の遺伝子診断サービス(自由診療)の価格を統制しているという報道があったため、今回の記者発表となりました。米Myriad Genetics社からBRCA1と2の遺伝子解析技術のライセンスを受けて、2000年から粘り強く、しかも地味に赤字を続けながら、日本人のBRCA1と2の遺伝子変異の疫学データなどの整備を進めてきた同社にとっては、アンジーの告白はまったく驚天動地の事件で、様々なマスメディアの報道では被害者の立場になってしまったのです。

http://www.falco-sd.co.jp/news/%E6%98%A8%E4%BB%8A%E3%81%AE%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E3%81%AE%E5%A0%B1%E9%81%93%E3%81%AB%E9%96%A2%E9%80%A3%E3%81%97%E3%81%A6_Press%20_1_.pdf

 しかし、ファルコにはアンジー以外にも偶然の女神が微笑みました。今月1日から2週間、ファルコがBRCA1と2の遺伝子検査に関する啓蒙的なテレビCMを関東1都6県で展開しており、ご覧になった読者も多いのではないでしょうか?アンジーがNY Timesのブログで家族性の乳がんであり、生涯の乳がん発症リスクが85%、それに対抗するため乳房切除術を行ったと告白のが5月14日。その後に放映枠を押さえたとすると、ファルコには凄腕の広報マンがいたと推定していましたが、本日確かめてみると、これはまったくの偶然でした。

http://www.nytimes.com/2013/05/14/opinion/my-medical-choice.html
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130515/168288/

 ファルコはBRCA1と2の遺伝子検査サービスと乳がんの罹患や再発リスク診断という画期的な遺伝子解析事業を、13年越しで展開しています。ライセンス導入当初、取材したことを思い出してみると、ファルコは遺伝子診断による予防医学はすぐには事業にはならんと腹を括って同社は挑戦していました。2000年の段階で、Myriad社は数10億円の売り上げを上げていましたが、まず日本人のBRCA変異の疫学データがないこと、疾患リスクがあるからといって乳房切除を予防的に行う医療習慣が日本にはなじみがなかったこと、さらには当時はBRCA1と2の遺伝子解析サービスによる予防医療が薬事法で認可される診断薬になるかどうか?どんな倫理的審査が必要か?規制環境も不透明でした、また、価格も通常の検査よりは高額であること、さらには解析結果をきちっと患者に伝えるために遺伝子カウンセリングを医療機関が行う人材とインフラが我が国には乏しかった、医師や患者への啓発も必要だったのです。本当に問題が山積し、とてもじゃないが日本で遺伝子診断による予防医療が定着するのは並大抵の努力ではできないことでした。しかし、ファルコは淡々と真正面から我が国初の遺伝子解析による予防医学の事業化に取り組み、歩みは米国に比べ大変遅々としておりましたが、医師や患者の理解が進み、自由診療として検査を受託する事業で、実は2012年から単月黒字に転じるなど、やっと収益が上がる見通しが出てきたのです。そこで同社は2013年1月から10日間、関東1都6県で、BRCA遺伝子検査のTVコマーシャルを放映、6月1日からのTVコマーシャルはその第二弾として企画されたものです。同社の努力に偶然の女神も微笑んだという訳です。

 アンジーの後押しによって、まだどれだけBRCA1と2の検査事業の売り上げが伸びたかはまだ分かりませんが、医療機関の問い合わせも増えており、同社が目指す遺伝子解析による予防医療が大きな追い風を受けていることは間違いないでしょう。同社は今までで累積1000件のBRCA1と2の受託遺伝子解析を受注しています。今後、我が国でのBRCA1と2の遺伝子変異と乳がんや卵巣がんの疾患リスクのデータベースが充実すればするほど、日本人の乳がん患者さんのリスクを低減できる予防医療が定着するものと、期待しています。我が国のゲノム予防医学を切り開く、ファルコの努力に是非とも注目願いたいと思います。

 そろそろ医療経済的にも、患者のQOLのためにも、我が国の皆保険制度から予防医療や予防検査が排除されている、なんら根拠なき習慣を再検討すべき時がきたのではないでしょうか?安倍内閣の成長戦略(第三の矢)では食品の機能性表示が取り上げられましたが、こうした遺伝子解析による予防医療(個の予防)に対しても目配りをすべきでした。新しい健康サービス産業が、ここに芽吹くと私は確信しています。

 今週も、どうぞお元気に。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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