6月4日までシカゴで開催されていた米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会に合わせて米研究製薬工業協会(PhRMA)が出した声明によれば、現在PhRMAメンバーのパイプラインにある5000以上の薬剤のうち、3000はがんを適応としているそうです。

https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130604/168745/

 そのうち8割はファーストインクラスの可能性を持つ、つまり“ピカ新”(古い?)になり得るとしていますが、私がASCOの発表の中で個人的に「おやっ」と思ったのは、今ある薬剤の使い方に関する発表でした。

 スニチニブ投与後に病勢進行した腎細胞がんに対する治療に関して、他の薬剤によるセカンドライン治療とスニチニブ継続投与の有効性を理論的に検討した、米National Cancer Institute Center for Cancer ResearchのMauricio Burotto氏の発表です。

 Burotto氏はスニチニブが投与された321人のデータから、投与期間中の腫瘍の増殖定数を求め、1日あたり0.00082という値を得ました。この増殖定数は172人で300日以上、95人で600日以上、49人で900日以上安定していました。

 このことから、セカンドラインとして別の薬剤を使用せずにスニチニブを継続した場合の無増悪生存期間(PFS)を計算すると、RECIST基準で病勢進行の基準となっている20%増大(1.2)の自然対数を増殖定数で割って、7.3カ月となりました。一方、これまでに行われた臨床試験の結果では、スニチニブ後のセカンドライン治療の無増悪生存期間(PFS)は、エベロリムスで3.9カ月、ソラフェニブで3.4カ月、アキシチニブで4.8カ月。

 Burotto氏は、スニチニブ投与後に病勢進行した患者への治療として、スニチニブを継続投与する群を設定して評価しても良いのではないかとしています。

 なるほど。これは血管増殖因子の経路を阻害する薬剤に、本当に差があるのかどうかをみる試験であるような気もしますが。

 もうひとつ、おやっと思ったのは(あくまでも個人的にです、念のため)、去勢抵抗性前立腺がんへのAfliberceptの追加効果を検証したVENICE試験の結果を発表した、カナダPrincess Margaret Hospital and University of TorontoのIan Tannock氏の発言でした。この試験では、標準治療であるドセタキセル/プレドニゾンにAfliberceptを追加しても、OSの延長はみられませんでした。

 Tannock氏は、「PSAや腫瘍に対しては一定の効果が示唆されたが、副作用のために投与期間の短縮を余儀なくされた」とし、今後この種の大規模フェーズIII試験を実施する際には、効果がかなり高いことを示すエビデンスが前段階までに得られている場合に限るべきだと指摘しています。お気持ちはよく分かります。

 フェーズI試験で決定された用量では過剰投与になりやすいという問題もASCOでは取り上げられ、試験方法の見直しの必要性が指摘されたようです。

https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130603/168740/
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130604/168742/

開発初期から実臨床まで、間断ない見直しが必要なのだと、あらためて感じた次第です。

                       日経バイオテク編集長 関本克宏

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