私の住む市のとなり、東京都小平市で、道路建設の是非を問う住民投票が日曜日に行われました。結果は、投票率35%という数字から「市民の総意として扱えない」と開票は行われず、明らかにはされませんでした。検出力が不足していたとしてもデータを公開し解析すべきだろうと個人的には思います。これが医薬の世界ならサブ解析でもメタ解析でも行って、何らかの傾向を見いだそうとするのですが、投票率37%で1人の市長が決まってしまうという世界では、また別の論理が働いているのかもしれません。

 さて、この金曜日からシカゴで、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次大会が開催されます。基礎的な研究から患者アドボカシーまで、幅広い話題が提供されるのがASCOの特徴で、3万人の来場者が見込まれています。また既に4500本のアブストラクトがWEBに公開されており、中には数多くの臨床試験の結果が含まれています。

 学会からは事前に、注目される7つの演題の概要が公開されました。

・50歳代で元気な男性は患者数の多いがんを発症しがん死するリスクが低い
 1万7000人の男性を対象とした、20年間にわたる継続的な研究の結果です。

・新たな免疫療法が多くの後期がんに積極的効果をもたらす
 T細胞に発現しているPD-1(Programmed death 1)のリガンドであるPD-L1を標的とするモノクローナル抗体製剤MPDL3280Aをさまざまな固形癌の患者に投与したフェーズI試験の結果です。

・早期臨床試験で2つの免疫療法の併用療法が単剤療法に比較して優れている可能性
 進行した悪性黒色腫に対して、ipilimumabと抗PD-1抗体薬nivolumabの併用療法により患者の約半数で長期間の腫瘍縮小効果が得られというフェーズI試験の結果です。

・後期の非小細胞肺癌(NSCLC)において、高線量の放射線治療より低線量の放射線治療の方がより安全で、より効果がある
 局所進行ステージIIIのNSCLCに対し、化学療法と併用する際の放射線療法は、標準線量(60Gy)のほうが高線量(74Gy)よりも安全で効果的であることが明らかになった、フェーズIII試験RTOG0617の結果です。

・がんの再発者の手術後の定期検査はステージ1の精上皮腫(セミノーマ)の患者にとって、安全な長期的な戦略となる
 I期のセミノーマで手術が成功した患者の多くでは、サーベイランスのみで10年の癌特異的生存率が99.6%に上ることが、デンマークの長期大規模コホート研究から示されました。

・ルーチンのサーベイランスのイメージングスキャンは、多くのリンパ性がんの生存者にとっては必要ではないかもしれない
 びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 (DLBCL)を再発した患者の大多数は、生理学的検査の異常や、血液検査の異常など症状を通じて発見されていました。

・初期の臨床試験で、新規の標的医薬品が、治療抵抗性慢性リンパ性がん(CLL)に対する、有望な活性を示す
 再発性、難治性のCLL患者を対象としたidelalisibのフェーズI試験の結果です。

 実際に学会が始まれば、多くの演題の内容が報道されるでしょう。もちろん日経バイオテクは現地に記者を派遣し、創薬の初期段階の発表を中心に速報します。

 さらに日経BP社では、フェーズII以降の臨床試験を中心に、日経メディカルオンラインの「癌Experts」で速報します。
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/search/cancer/

どうぞご期待下さい。

                  日経バイオテク編集長 関本克宏

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