皆さん、お元気ですか。

 今月もBiotechnology Japan Webmasterの宮田が執筆させていただきます。著者の選定に今尚難渋しております。皆さんのお知恵を是非ともお寄せ願います。現在、一人ご推薦をいただいております。来年にも、新しい著者にご登場いただけると、期待しております。

 さて、まずはお知らせです。残席も僅かとなりつつあります。どうぞ、お早めにお申し込み願います。 6月19日午後、品川でiPS細胞の実用化の本命である医薬品のスクリーニングや安全性研究への応用について、セミナーを開催いたします。武田、エーザイ、京大iPS細胞研究所、医薬品医療機器総合機構などから講師を招聘、リアルに産業化の現状と課題を討議したいと思っております。また、昨年度から始まった難病iPS細胞研究プロジェクトの全貌も、今回のセミナーで明らかにされます。我が国が世界をリードする難病研究とiPS細胞研究の融合で、私は次の医療イノベーションが点火されると考えています。

 どうぞ下記のサイトよりお早めにお申し込み願います。非常に急速にiPS細胞の産業応用を体感して下さい。
http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/130619/

 今年は我が国でHUPOが開かれ、全ヒトたんぱく質の解析を可能とする第二世代のプロテオミクスの誕生が宣言されるはずですが、プロテオーム関連ニュースの方はどうも低調です。私のネタ元でもあります米国科学振興協会(AAAS)のニュースサイトでプロテオームで検索しても、今年1月の記者発表が一件しか存在いたしません。最もこの記者発表はプロテオームが第二世代を宣言したものでしたが。。。

 ゲノム並にヒトの全プロテオーム解析がコストも時間的にも科研費の範囲で可能になるまで、プロテオームによる新規バイオマーカー発見や疾患や生命現象のメカニズム解析の発表は、少し待たなくてはなりません。代わってここ数年はまさにこのメールのタイトルにもあるようにターゲテッドプロテオミクスの研究が進展することを期待しています。

 具体的にはケミカルゲノミックスの一翼を担う、ある特定のたんぱく質や化学物質に細胞内で結合しているたんぱく質の網羅的解析が注目です。実際、こうした研究からシグナル伝達の解析や疾患標的たんぱく質の実態が解明されると期待しています。化学物質とそれが結合するたんぱく質のデータベースが充実すれば、たんぱく質を調べるまでもなく、化学物質を与えて細胞が変化した場合に、その科学物質が作用するたんぱく質が推定可能です。ひょっとしたら全ヒトプロテオーム定量解析は、ケミカルゲノミックスによって絞り込まれたたんぱく質の変動を最終的に確認する手段としてまずは普及するかも知れません。更なる価格下落と試料量の微量化、そして何よりも簡便化によって、今の次世代DNAシーケンサーのように、いきなり標的たんぱく質の探索に利用されるようになるとは思いますが、尚、まだ時間が必要です。その意味では、ケミカルゲノミックスのデータベースの充実と、たんぱく質相互作用のデータベースの整備がプロテオーム研究の喫緊の課題といえるでしょう。急がば廻れです。

 例えば、米カリフォルニア大学Davis校のグループがEMBO Molecular Medicineの2013年5月17日号に発表した論文はその典型でしょう。パーキンソン病のモデルマウスに片っ端から精神疾患の治療薬を投与したところ、非ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・抗痙攣薬エチホシン(etifoxine)が、この疾患モデルマウスに治療効果を示したのです。同グループはこの治療効果がミトコンドリアの外膜に突き出しているたんぱく質mitochondrial translocator protein (TSPO),に、エチホシンが結合するためであることを突き止めました。今までパーキンソン病とTSPOの関連はまったく知られていませんでした。同グループは、新しい治療標的となると鼻息があらい談話を掲載しています。
http://www.ucdmc.ucdavis.edu/publish/news/newsroom/7748

 勿論、この研究はまだモデルマウスであること、ヒトに関してTSPOの遺伝的な変異とパーキンソン病の関連がまだ研究されていないこと、そして何よりも海外では市販されているエチホシンはパーキンソン病は適応外であるため、治療効果は確かめられていません。1960年代に開発された古い医薬品であり、安全性も確かめられています。投薬量が処方の範囲ならすぐにでも医師主導の臨床研究で確かめるべきかも知れません。

 冒頭で宣伝したiPS細胞のセミナーでは、難病などの患者からiPS細胞を樹立、分化や疾患の表現系を誘導する処理を行い、疾患のヒトのモデル細胞を開発する研究が発表されます。これはまだ期待ですが、ひょっとしたらまだるっこしい動物の疾患モデルでのスクリーニングよりも、ヒトiPS細胞由来の疾患モデル細胞を対象にした薬剤や化学物質のスクリーニングの方が、標的たんぱく質を発見できる効率は良いかも知れません。どうぞ、興味のある方は下記のサイトよりお申し込み願います。
http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/130619/

 今月もどうぞお元気で。

        Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満

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            次号は新しい著者の予定です。

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