皆さん、お元気ですか?

 東京は今日も花冷えですが、先週の土曜日の鶴岡市では満開の桜の下、凍えるという経験をいたしました。花冷えどころではありません。東北では満開の桜と雪という組み合わせもあったようですが、春を待つ北の日本にはこの天候は厳しい試練となりました。田植えなどにも影響が出ないことを祈るばかりです。サッカーでは、香川選手がチームで定着しており、我が国発の異次元のサッカーを展開できるまで、キャリック選手との連携も熟して来ました。日本のサッカーもとうとうここまできたのです。

 さてバイオです。

 H7N9の感染者は中国でとうとう102名を超えました。死者も20人を超えています。世界保健機関(WHO)の発表ではヒトとヒトの間の感染はまだ起きていないと言いますが、一方で2013年4月19日の発表から感染者の過半が鳥と接触した事実がないと発表し初め、WHOが若干ですがヒトとヒトとの感染の可能性を示唆するポジションを取り始めています。パンデミックも想定した備えを取る必要があるでしょう。少なくとも現在の感染者以上の感染者が中国に存在することは間違いなく、感染した患者が増大すればするほど、ヒトとヒトに感染する変異を獲得したウイルスが誕生するリスクは増大いたします。まったく厄介な状況になって来ました。

http://www.trust.org/alertnet/news/chinas-bird-flu-death-toll-rises-to-20
http://www.trust.org/alertnet/news/who-data-on-bird-flu-raises-new-questions-about-human-transmission

 さて、2013年4月18日に開催された厚生科学技術審議会科学技術部会の議論は、極めて興味深い論争となりました。平成25年度の厚生労働科学研究費補助金の公募要項(2次)を審議したのですが、いつもはほとんど議論もなく、了承される公募要項には委員の喉に突き刺さる小骨が存在していたのです。

 医療を成長戦略の一つの柱と考える安倍政権が誕生したことを機敏に受けた厚労省の今年度の予算の目玉は言うまでも無く、創薬基盤推進研究事業であります。主に、大学やナショナルセンターなどアカデミックな研究機関の中にあるはずの新薬やコンパニオン診断薬のシーズを対象に、臨床試験の費用を支援して、ヒトでのPOC(プルーフオブコンセプト、治療概念の実証)を獲得、もし証明できれば、そのデータを持って、企業やベンチャーなどに商業化を交渉、折良くば産業化を推進する、いはば“呼び水”の研究費です。厚労省の目論見としては、ここから新薬やコンパニオン診断薬を可能な限り早急に世に出し、新政権の期待に応えようというものです。

 今回、問題となったのは、「医薬品やコンパニオン診断薬の開発に関する採択課題については、採択後に独立行政法人医薬基盤研究所に新設される「創薬支援戦略室」と協力し、同研究の知的財産等の守秘を前提に、実用化に向けた研究開発を推進することを条件とする」という条項が、応募要項に明記されていた点でした。

 第一の争点は、創薬支援戦略室が何をやるのか?厚労科学研究費の選考に関与するのか?これがまったく良く分からないという点でした。もとも創薬支援戦略室がまだできていないため混乱が生じるのはやむを得ないのでしょうが?それにしても、この室の名前はややこしい。日本版NIHと勇ましい政治的なかけ声で新設された組織ですから、国が支援する創薬シーズ研究を俯瞰して、予算配分や課題選択全体を調整し、いち早く新薬創製を国として戦略的に実現することに責任を持つ、新薬開発のナショナル・ヘッドクォーターであるという誤解を全委員が持っておりました。そのため、厚労科研費の審査にも当然口を出し、研究費を割り振る強力な権限を持つというイメージを抱いたのです。その結果、選考委員の構成によっては、創薬支援戦略室と厚労科研費の選考委員会の間で利害相反が起こりうるのではないか?という懸念が生じていたのでした。厚労省の事務局の説明は曖昧なものでしたが、最終的には厚労科研費の選考には創薬支援戦略室は関与しないと明言することで議論は収まりました。

 しかし、それは第二の争点を生んでしまったのです。つまり厚労科研費に選考されたプロジェクトに、創薬支援室はどんなメリットを与えられるのか?という点です。新薬開発の目利きを集めた創薬支援室が、新薬実用化よりはどちらかというと科学研究に偏りがちな従来の厚労科研費の選考委員会が破壊的に再構成されない限り、旧来の延長線上の選考委員会で選択されたけっして企業化という観点からぴかぴかではないシーズの実用化をどうやって支援するのか?という根本的な疑問です。本来なら、選考の段階、あるいは応募プロジェクトの掘り起こしの段階から創薬支援戦略室が関与しないと、新薬開発の成功確率は低下することは目に見えているためです。この矛盾に厚労省の中でさえ、創薬支援戦略室は直面してしまいます。まして文部科学省管轄の大学や理化学研究所、経産省の産業総合技術研究所など、他省庁の創薬プロジェクトを調整し、最短の時間で最良の新薬を誕生させることを、どうやって支援できるのでしょうか?とても迂遠で、ため息が出そうです。

 技術部会の委員の中には、単なる支援だけであれば創薬支援室でよいではないか?戦略という名前を付けたからややこしくなると指摘する委員も居ますが、この仕組みではNIHのように省内の部局横断、そして他省庁との横断的な創薬支援体制の構築など、夢のまた夢。10年後に振り返ってみれば、結局は各省庁の予算獲得のためのはやりのキーワードとして新薬や創薬を使ったという後味の悪さだけが残る結果となるかも知れません。

 最新の研究成果を政府一丸となって、患者にお返しするにはどういう意志決定と予算配分の体制を取るか?これこそ、安倍政権の政治主導で行う機構改革であり、それを厚労省の一部の研究所にだけに委ねるように矮小化させることは許されないと思います。今すぐここは手を入れないと、新薬は生まれず、医薬基盤研究所だけが焼け太りしただけということにも、成りかねません。是非とも、国は知恵を絞り、製薬企業ももっと意見を言うべきであると思います。

 さて、バイオ関連の投資、ライセンス担当者の教育プログラムであるバイオファイナンスギルド第12期は今年7月から開始いたします。先週ご案内したら多数の方から試料請求をいただきました。ご興味のある方には資料を送付いたしますのでhttps://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/ でご請求願います。

 今週も皆さん、どうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/