ここでインフルエンザ等対策措置法を確認しておく【日経バイオテクONLINE Vol.1865】

(2013.04.04 00:00)
関本克宏

 中国で鳥インフルエンザH7N9型ウイルスの人への感染が確認されました。3月31日に3人、4月2日に4人の感染が明らかにされ、7人のうち2人は死亡しています。これらの感染者への濃厚接触者にはこれまでのところ異常は確認されておらず、確認されたウイルスがヒト-ヒト感染の能力を持っているかはまだ不明です。

 折しも昨年5月に公布された「新型インフルエンザ等対策措置法」の施行(公布から1年以内)を前にしたパブリックコメントが3月に終了したばかり。今回のウイルスがパンデミックを引き起こすかどうかはまだ全くわかりませんが、ここでこの法律に基づくインフルエンザ対策を確認しておくのも、悪くはないでしょう。その具体的なところは、2月7日に「新型インフルエンザ等対策有識者会議」が発表した「中間とりまとめ」からうかがい知ることができます。

 この法律は、2009年に大流行した新型インフルエンザウイルスH1N1pdm2009への対応の反省から制定されたものですが、一番の目的は、対策を行う権限の明確化と、指示に基づいて医療行為を行った際の補償基準の明示だと言えます。2009年の流行時には、都道府県知事が公衆衛生上の対策を市民に要請する際に、その根拠となる法律がないことに疑問の声がありました。知事の権限を明確化すれば、それに対応してかかった費用や事故等に対する補償の基準が必要になります。ちなみに補償については、東日本大震災で注目された災害救助法と同様の基準、手続きとされています。未知の感染症は災害として位置づけられたのです。

 次に重要なのが、ワクチン接種の問題です。パンデミックの発生から接種までには、タイムラグが発生します。2009年のH1N1pdm2009の際は、4月23日にメキシコで発生が確認されてから医療従事者に優先的な接種が開始されたのは半年後、10月後半でした。日本では8月19日に流行が始まったと宣言されています。

 もっと詳しく見ると、4月27日に厚生労働省が国内メーカーに生産体制の準備を依頼、6月9日に国立感染症研究所がワクチン製造候補株をメーカーに提供、7月14日に厚労省が生産開始を依頼という経過をたどっています。また7月10日には、不足分を輸入ワクチンで補うという見解が出ています。

 今回の「中間とりまとめ」には、タイムラグ解消に向け、1mLではなく大量生産しやすい10mLバイアルの製造を優先すること、そのため集団接種を基本とすることが明記されています。また細胞培養法などをはじめとする新しいワクチン製造法に取り組むこと、経鼻粘膜ワクチンのような新しい投与方法の研修開発を進めることも挙げられています。

 2011年8月には、厚労省の新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備臨時特例交付金に4社が応募しました。これは2012年度までに細胞培養法ワクチン生産のための実生産施設の構築・治験の実施等を行い、2013年度の実用化を目指すというものです。しかし阪大微研は2012年11月に事業からの撤退と助成金の返還を発表し、北里第一三共ワクチンは未だ申請準備中です。武田薬品工業と化学及血清療法研究所が新型インフルエンザワクチン(H5N1インフルエンザワクチンおよびプロトタイプワクチン)を3月末に承認申請しました。

 今回の「中間とりまとめ」では、2011年の新型インフルエンザ対策行動計画に記載されていたプレパンデミックワクチン(以前はプロトタイプワクチンと呼ばれていた)は記載されませんでした。これは、新型インフルエンザウイルスが高い確率でヒト-ヒト感染を起こす前に、トリ-ヒト感染の患者またはトリから分離されたウイルスを基に製造されるワクチンのことですが(現在はH5N1亜型を用いて製造)、どの型の新型インフルエンザが発生するのか予測が困難であることが重視されました。ただし、プレパンデミックワクチンに関する研究は継続していく方針です。

 これからも法律の施行までに様々なことが検討されると思いますが、新型インフルエンザをいたずらに恐れたり、あおったりせずに、ウオッチしていきたいと思います。

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                    日経バイオテク編集長 関本克宏

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