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    【日経バイオテク/機能性食品メール  2013.3.22 Vol.86】
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◆日経バイオテク編集部より◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
クールジャパン、日本食、TPP、The Sexy Jobは統計学者
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 先週金曜日(2013年3月15日)に続いてお目にかかります。「日経バイオテク/機
能性食品メール」をお届けしております日経バイオテクONLINEアカデミック版編集
長の河田孝雄です。明後日の日曜日(3月24日)からは、仙台市で開かれる日本農
芸化学会2013年度大会を取材します。

 安倍晋三首相が3月15日に環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加を表明しまし
た。政府が公表したTPP交渉参加に伴う経済効果の試算では、国内総生産(GDP)を
実質で3.2兆円押し上げ、農林水産業の生産額が3兆円落ち込むとのことです。

 この経済効果の試算がどれだけ妥当なのかはよく分かりませんが、クールジャパ
ンで注目される日本食がさらに世界に普及することにより、農林水産食品分野でビ
ジネスチャンスが増えていけば、と考えております。

 3月13日に農林水産省で記者向け説明会が開催されたスサビノリの単独ゲノム解
読の成果発表でも、おにぎりや寿司などで身近なノリが、世界に誇れる日本食の重
要な食材であることを改めて示されました。

※日経バイオテクONLINE記事(以降同じです)

水産総合研究センターと遺伝研、九大など、スサビノリ単独の全ゲノム解読、
紅藻類研究に寄与
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130313/166784/?ST=ffood

 いうまでもなく日本食は、日本人の平均寿命が世界のトップレベルであること
から健康長寿のヒントが含まれているのでは、と考えられています。

 日本農芸化学会2013年度大会のトピックス26題にも、日本食の良さの再発見につ
ながる東北大学の成果が選ばれました。1975年付近の日本食が高い健康有益性を持
つことが示唆される結果を、マウスの実験で得たという成果です。

 東北大学大学院農学系研究科准教授の都築毅さんと教授の池田郁男さんらのグル
ープが3月25日に発表します。確かTV番組でも取り上げられたので、TVでご覧にな
った方も多いのではと思います。

 2005年、1990年、1975年、1960年の4つの時期の日本食の献立を再現し、これを
調理したものを凍結乾燥・粉末化して通常飼育食に30%混合し、老化促進モデルで
あるSAMP8マウスに自由摂食させ、8カ月飼育しました。この飼育期間終了後、血漿
や肝臓の生化学的検査や、肝臓における生活習慣病関連遺伝子のDNAマイクロアレ
イ解析を行ったところ、1975年の日本食を摂取したマウスで、白色脂肪組織重量や
肝臓脂質蓄積量の減少、肝臓における脂肪酸β酸化酵素の発現量増加など、好まし
い影響が観察されました。

農芸化学会トピックス賞、企業は新日鉄住金、マルハニチロ、ダイセル、
ユニチカ、キリン、ANBAS、キミカ、ブルカー、味の素、免疫生物研
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20130307/166658/

 いましがた都築さんにうかがったところ、農芸化学会のこの発表については、TV
では民放3社、新聞は7社以上、ラジオも2局といったように、多数の取材を受けた
とのことです。まさに世間の注目を集めた発表といえます。

 この研究グループの池田教授は、農芸化学会2013年度大会と同じ、仙台市の東北
大学で2012年5月に行われた第66回日本栄養・食糧学会大会では、「栄養学・食糧
学研究のための実践統計検定法」と題する教育講演をなさいました。大きな会場が
立ち見となり、熱気で5月の仙台の会場が妙に暑かったのを覚えています。

 この実践統計検定法については、その後も全国各地で講演依頼があり、大変な人
気。講演内容などをとりまとめたものを、日本農芸化学会の月刊誌「化学と生物」
で、2013年5月号から7月号まで3号続けて発表になるとのことです。

 食品の機能性研究では、消費者庁が表示を許可する特定保健用食品(トクホ)の
審査で、この統計の問題が特に注目されているように思います。

 10日以上前のことになりますが、3月11日には、日本統計学会の理事長で、トク
ホや医薬品の審議委員でもある統計学者、岩崎學・成蹊大学理工学部教授の講演を
うかがう機会がありました。岩崎教授は、消費者委員会の新開発食品評価第一調査
会および第二調査会の専門委員で、医薬品医療機器総合機構の新医薬品や先天異常
検討会の委員などをお務めです。

 統計数理研究所リスク解析戦略研究センターと国際栄養食品協会(AIFN)が主催
の「統計セミナー:食品成分の機能性に関する科学的根拠解析」で、「食品分野に
おける統計的データ解析の考え方」と「トクホの評価における統計的課題」の2部
構成で、2時間半以上にわたり講演と質疑応答が行われました。

 この講演の冒頭で「次の10年間、statisticiansはthe sexy job」というGoogleの
チーフエコノミストHal Varianさんの発言を紹介し、「Tea Tasting Lady」を例に
統計学の深みを解説しました。

 次世代の機能性食品の研究者は、統計にも明るい必要がありそうです。統計を学
んでおけば、キャリアアップやビジネスチャンスにつながりそうです。

 メール原稿の締め切り時間になりました。今週はここまでとさせていただきます。