Wmの憂鬱、先端医療プラットフォームの再点検こそ急務【日経バイオテクONLINE Vol.1855】

(2013.03.12 00:00)
宮田満

皆さん、お元気ですか。

 後20分で飛行機に乗らなくてはなりません。今年に入ってから、何故か、那覇-羽田を4往復もしております。今週の末は、豪雪の山形県鶴岡市で、1万人のコホートを対象にメタボローム分析を行う野心的な次世代の健康調査「鶴岡未来健康調査」のキックオフを取材する予定です。またもや気温較差25℃への挑戦です。もうそろそろ本格的な春を迎えたいと、ため息をついています。

 さてバイオです。

 先週の厚労科学審議会技術部会に、神戸の理化学研究所と先端医療センターからそれぞれiPS細胞の臨床研究の申請が行われました。まったく同じ書類のコピーを主任研究者の名前を変えて申請されています。本当は理化学研究所がiPS細胞から網膜色素上皮細胞を分化誘導し、細胞シートにして、先端医療センターで加齢黄斑変性の患者に移植する一連の共同研究ですが、書類上は二カ所からほとんど同じ文面で申請されるという、 びっくりするような官僚主義、というか、そもそも幹細胞の倫理指針がそういう構造であるということに、私は一番驚きました。

 このような申請では共同研究の責任範囲が不明確であり、最悪の場合は責任の譲り合いに発展しかねません。本当は一つの研究として、申請すべきであると思いました。あれだけ注目されたiPS細胞の臨床研究ですら、この体たらくです。

 我が国で先進医療技術を実用化するためには、有形無形の落とし穴がいっぱい存在しているのです。かつてこのメールでも提唱いたしましたが、一度、ナショナルセキリティ番号など我が国が欠く先進医療技術実用化のためのプラットフォームの総点検を行わなくてはなりません。政府が医薬品・医療機器の輸入超過2兆円を解消するため、医療イノベーションを推進すると力んでも、土台が虫食いだらけでは、事業化など夢のまた夢です。

 米国と比べ、国立衛生研究所(NIH)が存在しないので、厚労省傘下の国立がん研究センターなど中核医療・研究機関(ナショナルセンター)を統合して、看板だけNIHと付け替えても、これは機能するはずもありません。医学研究に関して、文科省、厚労省、経産省、その他の省庁の総ての研究開発予算を糾合し、管轄・運営する体制を敷かなくてはNIHの名折れとなるだけです。国民の健康を守り、健康・医療産業を我が国で育成しようというならば、その程度の改革ができないようでは展望は開けません。勿論、生命科学など、プロジェクトではなく、好奇心に沿った自由な発想の基礎研究は日本版NIHが支配してはなりません。近視眼的ばらまき研究こそ、最悪の選択であるためです。基礎研究には別の財源を用意すべきであると、私は考えております。

 成長戦略を標榜する安倍政権が存命なうちに、是非とも学術会議などアカデミアが提案を行い、社会的な議論を喚起すべきではないでしょうか?

 我が国の先進医療にも、いち早く春の声を聞きたいと、こころから願っております。こうしたプラットフォームの整備が、東北の復興で膨大な資金が投入されている医薬・医療機器産業の育成にも必要であると思っております。

 今週もどうぞお元気で。

               日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/

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