4月から和歌山県立医科大学に、がんの患者団体からの寄付による「がんペプチドワクチン治療学講座」が開設されます。講座の管理・運営は第二外科の山上裕機教授が行い、そして寄付口座を支援するのは「市民のためのがんペプチドワクチンの会」です。講座では全国多施設における共同臨床試験を展開し、新規のがん治療法を開発するとともに、がんペプチドワクチン治療のエキスパートを育成するとしています。

 具体的には、夏頃をめどに、膵臓がん40人、食道がん40人を対象に、3年間の臨床試験を行う予定です。特徴的なのは対象をHLA-A2の患者としていることで、これまで対象とされてきた日本人の60%を占めるHLA-A24以外の患者を対象とすることで、新しいエビデンスを構築することを目的にしています。HLA-A2は日本人の約20%を占めています。

 寄付口座の維持には、3年間で3000万円が必要で、市民のためのがんペプチドワクチンの会は、半年ごとに500万円の寄付を集める計画です。最初の納入は3月末、同会のホームページを見ると、2月11日時点で寄付の額は58万2500円となっています。

 市民のためのがんペプチドワクチンの会の母体は「市民のためのがん治療の会」。舌がん患者であった代表の會田昭一郎氏が、セカンドオピニオンの情報提供を中心とする活動を行っている中で、出会ったのが現シカゴ大学の中村祐輔教授でした。ご存じの通り、中村氏はスーパー特区の開設や内閣官房医療イノベーション推進室長としての活動を通して、研究開発の改革に取り組みましたが果たせず、市民活動に期待を残して日本を離れたのでした。現在は市民のためのがんペプチドワクチンの会のアドバイザーグループに名を連ねています。ちなみにがんペプチドワクチンは未承認であるため、会を別に立ち上げることにしたそうです。

 膵臓がんに関しては、今年1月のASCO-GIで山上氏のグループが、HLA24:02拘束性の血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)エピトープペプチドのエルパモチドによる、PEGASUS-PC試験の結果を発表しています。ゲムシタビンとの併用で、全生存期間は残念ながらプラセポ群との間に有意差は見られませんでした。今後は対象を絞った試験とカクテルワクチンを使った試験の両方向で有効性を検討していくようです。今回の講座開設で、試験の方向がまた1つ増えました。これらの試験の結果が期待されます。

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                    日経バイオテク編集長 関本克宏