先月サンフランシスコで開催されたGastrointestinal Cancers Symposium(ASCO GI)では、胃癌に対してトラスツズマブに次ぐ抗体医薬として期待される抗VEGF受容体2抗体製剤、ラムシルマブのフェーズIIIの結果が発表されました。転移を有する胃腺がんまたは胃食道接合部腺がんに、セカンドラインとしてのラムシルマブとプラセボとを比較した、REGARD試験です。主要評価項目の全生存期間中央値は、ラムシルマブ群が5.2カ月、プラセボ群が3.8カ月、ハザード比は0.776(p=0.0473)と、ラムシルマブの有用性が示されました。

 この試験の無増悪生存期間のカプランマイヤー曲線を見ると、試験開始から2カ月程度はラムシルマブ群とプラセボ群でほぼ重なって低下して行くのに対し、2カ月あたりからラムシルマブ群の傾きだけ緩やかになり、3カ月目にかけて段ができています。ちょっと文章ではわかり難いのですが、2~3カ月効果が見られなかった後の“盛り上がり”は、バイオマーカーの存在を示唆しているそうです。大腸がんにおけるセツキシマブの試験でも同じ形が見られたと言います。なるほど。セツキシマブの場合はKRASでした。これからラムシルマブのバイオマーカー検索がますます活性化するでしょう。

 胃がんではまた、TS-1の術後補助化学療法における有効性を日本人で検討したACTA-GC試験における、採取された手術切片のバイオマーカー解析の結果も発表されました。各マーカーの有無別に生存期間を検討した結果、HER2、KRAS、METでは生存期間に差がありませんでしたが、EGFR陽性例は陰性例に比べて予後が悪く、MEGFR陽性かつMET陽性は、EGFR陰性またはMET陰性に比べて予後が悪いとなっています。EGFR阻害薬やMET阻害薬で、患者の絞り込みができる可能性があります。

 一方、大腸がんでは、今のところネガティブマーカーであるKRAS遺伝子と抗EGFR抗体製剤との関係しか明らかになっていません。これは大腸がんでは、抗体医薬が先行して開発されたことに関係しているのでしょうか。

 低分子化合物ではメラノーマのBRAF遺伝子変異、肺がんのALK融合遺伝子変異、乳がんのluminal A/Bなど、driver mutationと1対1の関係で、予後の予測と治療の選択が可能となっています。結果として乳がんや肺がんでは、遺伝子シグネチャーから薬剤を使い分ける個別化治療に向けて大きく進んでいます。

 しかし大腸がんでも、ラムシルマブに加えてアフリベルセプトやレゴラフェニブなどの開発が進んでいます。これらは全て血管新生阻害薬なので、その使い分けに向けてバイオマーカーの探索が急務となるでしょう。またPI3K/Akt、MEKなどを低分子化合物で阻害する試みも進んでいます。大腸がんのバイオマーカー検索が、一気に花開く日は近いかもしれません。

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                    日経バイオテク編集長 関本克宏