皆さん、お元気ですか。

 久々の休暇で京都を訪ねました。梅にも早く、冷え込み雪が散らつくなど、日頃の心掛けを反省するばかりでしたが、それでも京都は面白い。御所や寺町通りなど少し歩くだけで横井小楠の刺殺場所など明治維新の殺伐とした暗殺の香りを嗅いだような気になります。歴史が重層する都の凄みを感じながら現在の平和のありがたさをこころから思います。一応流行には敏感なので新島襄・八重の住居を見学に参りました。たまたまおじさん2人連れのカメラのシャッターを押したところ「会津から来ました」と喜色に溢れた音で名乗りをいただき、歴史がまだ心の中に残響を止めていることを知りました。この場所に展示されている会津若松の鶴ヶ城の写真は、数1000発のアームストロング砲弾を撃ち込まれ歪んでいます。東京上野不忍池で本郷の東大の岡から同様にアームストロング砲で射撃された彰義隊の子孫としては、何とも複雑な気持ちでした。

 それはともかく、アイススケートやアイスホッケー女子、女子ジャンプなど、ソチオリンピックに期待を膨らませる快挙に、心が明るくなります。こうした戦いこそ、21世紀の人類のあり方です。

 さて、バイオです。

 歴史に追いつこうとする最後の大国、中国が苦悶しています。最近、中国が武張っているのも、こうした苦悩を背景としていると解釈できます。まるで明治維新の征韓論のようなシナリオです。JSTの中国総合研究センターが2013年2月6日に開催した「習近平政権の政策と課題」は目から鱗のシンポジウムでした。中国人の講師ですら「中国に甘い統計だ」と世界銀行の中国経済成長予測の統計でも、2016-20年に労働人口の減少が始まるのです。つまり潤沢な農村部の人口から都市の工業・サービス分野へ農民工が流れ込み、旺盛なGDPの成長を支える基盤は後3年で大転換するということです。経済学的にはルイスの転換点、つまり経済成長のために、農村の雇用を都市が奪う転換が始まります。今まで農村の過剰労働力を吸収、都市との所得差を維持して成長してきた中国の成長シナリオが通用しなくなるのです。直接的には、いよいよ中国政府が恐れていた、賃金の上昇が避けられないということです。これによって、周辺の発展途上国との競争に中国が敗れるとすると、「中所得国の罠」に中国がはまり、南米諸国のように長期の経済低迷(スタグフレーション)に陥り、先進国へと離陸できない可能性があるのです。中国政府は人民の要求を満たす所得分配や社会保障制度の拡充に努めざるを得ない。ますます政府にお金がかかります。本当は軍備より年金にもっと投資をしなくてはなりません。

 今回のシンポでも、今までの課題なインフラ投資による成長は不可能で、労働人口も減少すれば、今後中国に期待できる成長は5%程度であるという味方でほぼ一致したと考えます。世界銀行の大甘の推計「China2030」でも2015年までは8.6%成長、16-20年までは7.0%、21-25年は5.9%、そして当初、中国の人口減少が始まる25-30年は5%成長に止まります。中国の経済に対して最も悲観的な津上工作室代表の津上俊哉氏は「中国はもう既に中成長国だ」と指摘、07年第二四半期に15%を記録した経済成長率は07年後半からもう5年も連続で減速、実は中国の生産年齢比率は07年に75.5%をピークに減少、生産人口の総数でも13年の10億人がピークで通説の2016-20年よりも早いと指摘したのです。そして総人口でも通説の2032年ピークアウトが、詳細に公開情報を精査し、計算すると2020年にピークを迎え、その後、一人っ子政策に反動で急速に人口縮小に入るという見通しを示しました。そして最後に「中国がGDPで米国を追い抜く日は来ない」と断言したのです。

 人口ボーナスがオーナスに変わり、経済成長が減速し、中国人民の豊かさへの希求が幻想におわる時、政権自体が危機に陥る可能性があります。中国政府もこの事情はよく分かっており、中所得国の罠を打破するためにイノベーションを起こさなくてはならないことを認識しています。実際、1990年代にはもう中国の中関村にでっかい看板を掲げ、イノベーションを勧奨、2001年12月には正式に世界貿易機構(WTO)に加盟、いよいよ物質特許を認めたのです。問題はこうして着々と手を打ってきたにも関わらず、イノベーションへの構造転換がまだ実を結び、経済成長を牽引するまでに成長していない点です。第二次世界大戦後に東アジアで中所得国の罠を脱したのは、韓国、台湾、香港しかない。この道は極めて厳しい経済の構造改革と政治の構造改革が必要なのです。果たして、共産党の一党独裁という政治体制を維持しながら、この課題を解決できるか?注意深く見守らなくてはなりません。

 しかし、人口13億人の国で今後しばらくは5%成長する市場は魅力的です。しかも、同国はイノベーションを求めています。21世紀のイノベーションの源泉であるバイオテクノロジーのビジネスに関しても、中国は重要な市場となるでしょう。まずは、偶発的な戦争とならない両国間のホットラインの敷設など、政治のインフラ整備が必要ですが・・・

 今週もどうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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