米研究製薬工業協会(PhRMA)の調査によると、今、世界で5400の薬剤が開発中なのだそうです。過去10年間に新薬の出なかった15疾患については、400を超える開発プロジェクトがあるといいます。

 これまで有用な治療薬がなかった分野、すなわちアンメットメディカルニーズを満たす薬剤は、大型化の可能性があるでしょう。例えば、田辺三菱製薬が創製し2010年に臨床現場に登場した多発性硬化症の治療薬、フィンゴモリド(商品名「ジレニア」「イムセラ」、日本では2011年11月に薬価収載)の売上は、2012年には世界で10億ドルを超えたそうです。ちなみに日本における多発性硬化症の患者数は1万6000人程度です(2011年度の特定疾患医療受給者証交付件数)。

 一方、PhRMAの調査では、バイオマーカーを使用し個別化医療を目指した試験が155件。新規技術を使ったプロジェクトは、細胞療法245件、アンチセンスRNA干渉が127件、がん細胞を標的としたモノクローナル抗体が102件、遺伝子治療が99件となっています。

 これらの治療法は、これまでブロックバスターの主戦場だった生活習慣病に、どう食い込んで行くのでしょうか。

 1月29日にFDAが承認したアンチセンス薬、ミポメルセン(商品名「KYNAMRO」)の適応症はホモ型家族性高脂血症でした。高脂血症では、肝臓のLDL受容体に結合してその数を減少させるたんぱく質、PSK9の抗体薬も開発されています。1月31日の中外製薬の決算発表会では、昨年10月にフェーズIが開始された抗PSK9抗体、RG7652に関して「スタチンを使用できない、あるいはスタチンでは十分に治療効果を得られない患者が存在し、可能性がある」とのコメントがありました。まずは既存薬がカバーできないところから攻めていくことになるのでしょう。

 そういう視点で見ると、高血圧にも広いスペースがあるようです。日経BP社が運営する臨床医向けのWEBサイト、「日経メディカルオンライン」の調査によれば、外来で降圧目標を達成している患者の割合は64.9%でした。コントロールが不良の患者の割合は年々増加傾向にあるそうです。それでもこの達成率を「評価できる」と回答した医師の割合は8割を超えていました。現在の手持ちの武器では……ということでしょう。

 とは言え、不勉強ゆえ、高血圧分野で思い浮かぶのは、ワクチンくらいしかありません。昨年4月にアンジェスMGが、アンジオテンシンIIを標的としたDNAワクチンを韓国のバイオリーダーズと共同開発するというリリースを出しましたが、ごめんなさい、追っていません。また昨年10月の日本高血圧学会では、慶応大学の伊藤裕氏がアンジオテンシンIIタイプ1(AT1)受容体に対するペプチドワクチンをSHRラットに投与した結果を発表しましたが、臨床応用までにはまだ時間があるようです。

 いずれにせよ将来は、患者の病態を細かく把握して、膨大な数の薬剤の中から最適なものを投与するということになるのでしょうか。1剤で全ての患者に効果があるというのが、最も理想的なような気もしますが。 えっ、ゴマペプチドがあるって?

ご意見、ご批判は以下のフォームよりお願いします。

 https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/