1月24日から26日までサンフランシスコで、ASCO GI(2013 Gastrointestinal Cancers Symposium)が開催されました。

 最近のASCOは6月のAnnual Meetingがややお祭り化している一方で、研究成果を一刻も早く発表しようとする姿勢の表れか、ASCO GIやGU(2月14~16日)、Breast(9月7~9日)など領域別集会の重要性が高まっているような印象を受けます。

 今回のGIではまず、抗グリピカン3(GPC3)抗体製剤、GC33(中外製薬)の日本人患者を対象にしたフェーズ1試験の結果に注目しました。報告したのは国立がん研究センター中央病院の奥坂拓志氏です。発表によると、フェーズ1試験で設定された全ての用量で忍容性が確認され、一部の患者では抗腫瘍効果が認められました。2011年のAnnual Meetingで発表された米国でのフェーズ1試験の結果と、ほぼ同じです。

 GPC3は細胞膜に結合する細胞外マトリックス、ヘパラン硫酸プロテオグリカンで、肝細胞癌で特異的に出現し、腫瘍の増殖に関与すると考えられています。GC33は2011年にRocheへ導出され、現在はプラセボ対照のフェーズ2国際試験が行われています。

 また、腫瘍血管を増殖させる血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)の部分ペプチド、エルパモチド(オンコセラピー、大塚製薬、扶桑薬品)の、進行膵癌に対するゲムシタビンとの併用試験、PEGASUS-PC Studyの結果も発表されました。報告したのは和歌山県立医科大学の山上裕機氏です。日本の25施設で行われたこのプラセボ対照フェーズII/III試験の結果については、生存期間の延長が示されなかったことが既に明らかにされており、がんワクチン開発の難しさを感じていた研究者も多かったと思います。

 今回の発表では、小数例ではありますが、エルパモチドの注射部位反応として潰瘍が発現したグループでは生存期間が延長しており、これがサロゲートマーカーとなる可能性が明らかにされました。現在、山上氏らのグループは、今回の試験の血清を対象に潰瘍の発現を予測する因子の探索を進めるとともに、他の部分ペプチドと混合した製剤を用いて膵癌を対象としたフェーズII、COMPETE-PC試験を行っています。少しずつ、少しずつ、対象を追い詰めているといった印象を持ちます。

 ここまで、日本人を対象に行われた試験の結果を2つ紹介しましたが、今回、私が一番“おやっ”と思ったのは。マルチキナーゼ阻害薬レゴラフェニブに関する米Bayer HealthCareの発表です。切除不能の大腸癌患者で、レゴラフェニブはKRAS変異型やPIK3CA変異型の患者でも、プラセボに比べて有意に生存期間を延長したという、フェーズIIIのCORRECT試験におけるバイオマーカー探索研究の結果でした。

 レゴラフェニブはVEGFR1-3やTIE-2、PDGFRやFGFR、KITやRET、RAF-1、BAFの受容体チロシンキナーゼの活性を阻害するとされています。今回の研究の結論は「KRAS変異もPIK3CA変異もレゴラフェニブが有効な患者を選択するためのバイオマーカーとしては有効ではない」というもの。「マルチなんだから、そりゃ1つや2つの遺伝子じゃわからんよなあ」と深く考えもせずに思った次第です。しかし、薬剤の投与範囲を狭めるような研究を製薬企業自らが進めることには、好感を持ちました。

 おふざけが過ぎましたか。日経バイオテク2月25日号には、ASCO-GIの真面目なレポートを掲載いたします。ご期待下さい。

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                    日経バイオテク編集長 関本克宏