年明け早々、米食品医薬品局(FDA)の内分泌・代謝薬諮問委員会がSGLT2阻害薬カナグリフロジンの承認を勧告しました。カナグリフロジンは田辺三菱製薬がJohnson&Johnsonに導出した薬剤です。昨年11月には、欧州医薬品庁(EMA)がダパグリフロジン(Bristol-Myers Squibb/AstraZeneca)を承認しています。

 日本でも、イプラグリフロジン(寿製薬/アステラス製薬)、カナグリフロジン(田辺三菱製薬)、トホグリフロジン(中外製薬)、ダパグリフロジン(ブリストル・マイヤーズ)、エムパグリフロジン(日本ベリンガーインゲルハイム/日本イーライリリー)、ルセオグリフロジン(大正製薬)が2013年から14年までに承認を申請するとみられています。

 糖尿病治療薬ではDPP4阻害薬やGLP-1アナログといったインクレチン関連薬の上市が一段落し、これからSGLT2阻害薬が次々と登場してくるわけです。

 このSGLT(sodium-glucose transporter)2阻害薬は、「尿に糖が出るのは悪いこと」という常識を逆転させて開発された薬剤だと言えます。糖尿病という名前は、もちろん尿に糖が出ることに由来しているのですが、SGLT2阻害薬は血液中の糖を尿中に排出させることで血糖値を低下させます。

 正常な人では、血糖値が160~180mg/dL以下では、尿中の糖は糸球体の近位尿細管に発現したSGLT2を介して90%が再吸収されます。しかし血糖値が高くなると尿細管での吸収容量を超えるため、糖が尿中に排出されたままになってしまいます。また、糖尿病患者ではSGLT2が高発現しており、糖再吸収の域値が240mg/dL程度まで上昇している事がわかっています。そこでこのSGLT2を阻害すれば、亢進した糖の再吸収を抑制できるのではないかと考えたのが開発のきっかけとなりました。ちなみにSGLT1は尿細管の他に腸管にも発現しているため、創薬のターゲットにはなりませんでした。

 この薬剤はこれまでにない作用機序の薬剤なので、従来の治療薬とうまく組み合わせてより高い効果が得られると期待されています。見方を変えれば、インスリン分泌やインスリン抵抗性など、糖尿病の根本的な病態を改善する薬剤ではないので、既存薬の併用が必要になる場面があるとも言えます。いずれにせよ既存薬にオンして用いる薬剤として、マーケットの拡大が予想されます。製薬各社もインクレチン関連薬とSGLT2阻害薬の両方を販売すべく、田辺三菱製薬が第一三共と、中外製薬が興和とサノフィと、大正製薬がノバルティスファーマとそれぞれ提携するなどの動きが出てきています。

 新薬で懸念されるのは副作用の発現ですが、これまでその作用機序から尿路感染症や多尿の可能性が指摘されていました。ところがカナグリフロジンよりも先に米国で承認申請したダパグリフロジンでは、がん、肝臓、腎臓への安全性の検証が不十分であることが指摘され、FDAは承認を推奨しませんでした。欧州ではこれらの懸念を認めつつも、EMAは承認を勧告したのです。

 これからこの分野を、常識を逆転させることを意識しながらウォッチしていきたいと思います。

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                    日経バイオテク編集長 関本克宏