Wmの憂鬱、ワクチンの副反応をmiRNAで事前鑑別できるか?【日経バイオテク RNAメール Vol.97】

(2013.01.21 16:32)
宮田 満

 千里ライフサイエンスセンターで開催された第6回次世代アジュバント研究会を取材して、東京にトンボ帰りしているところです。今丁度大井川を渡りました。江戸時代なら、人足におんぶして渡らざるをえなかった大川をわずか数秒で渡河してしまいました。世の中、本当に進んだものです。

 5回まで非公開であった次世代アジュバント研究会が公開されたのは、いよいよ今までの研究成果を世に問い、実用化を目指す意思の表れです。来週、臨床研究を開始するMucoRiceワクチンなど、わくわくする成果が発表されています。詳細は日経バイオテクONLINEで報道しますので、今暫くお待ち願います。

 ワクチンが感染防御や感染後の症状緩和に有用であっても、幼子を抱える母親がつい接種を躊躇うのは、発熱などの副反応がワクチンでは投与した患者の一部では避けられないためです。この副反応を予測するバイオマーカーの探索こそが、ワクチンを安全に使用する杖となり、安心して社会がワクチンを受け入れる重要な技術突破となるのです。

 ひょっとしたら血中のmiRNA群の変化がそのバイオマーカーになるのではないか?そうした疑問を解くための研究が医薬基盤研究所を中心に進んでいました。H5N1ワクチン(ALUMアジュバント)を19歳以下の小児252人に投与した臨床試験のデータを活用した研究です。現場では確認できませんでしたが、ALUM(水酸化アルミニウム)をアジュバントしてH5N1ワクチンは我が国の阪大微研、化血研、北里などが製造しているだけですので、我が国の企業が製造したプレパンデミック・ワクチンの臨床試験が今回の解析の対象となったはずです。ワクチン投与後に80%の小児にH5N1ウイルスに対するIgG抗体の抗体価が上昇、このワクチンは感染防止効果があることが判明しましたが、半数以上の小児に初回のワクチン投与後に発熱を観察しました、高熱であるグレード4は投与者の4%、グレード3は19.8%に発生しました。こうした副反応は母親にとっては大きな心配事です。予めグレード3と4の発熱を予測できれば、対処法や説明も異なってきます。

 医薬基盤研のグループは、東レのmiRNA解析チップ(1199種のヒトmiRNA検出)を使い、発熱患者を予測する血中のmiRNAマーカをワクチン接種前の血中から探索しています。発熱小児でmiRNAの発現が亢進しているものと、低下しているものが多数リストアップされています。現在のところ、10種ほどのmiRNAを組み合わせて判定式を作ると、この集団では80%の事前に発熱を予測できるまで、研究が進んでいます。但し、まだまだ実用には限りなく発熱患者を見逃さない組み合わせを極めるか?それともグレード3と4の発熱を予測する実用的なマーカーを開発するか?そろそろ研究方針を打ち出す段階だと考えています。是非とも、実用的なマーカーとなるmiRNAのセットを確定し、我が国の母親を安心させていただきたい。

 こうした努力が社会防衛としてのワクチンを日本の社会が受け入れるためには必要です。それが機能性RNAの研究から出てくるとしたら、皆さんにとって望外の歓びとなるでしょう。

 さて、米Alnylam社が1月15日に一株20ドルで新株を売り出し、1億2500万ドルを資金調達を図ったり、また米Dicenra社は1月3日に協和発酵キリンが第二のsiRNA医薬の創薬標的を選択、500万ドルのマイルストーンの支払いを得たと発表するなど、今年に入って米国では急な動きがありました。

 まだまだ今年も、機能性RNAの商業化は大きく前に動きそうです。

 今月もどうぞお元気で。

      日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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