全豪オープンでの錦織選手が絶好調のフェレーラ選手の前に、敗退を余儀なくされました。昨年も7つの大会で優勝し、どんな玉でも拾い、且つ攻撃につなげるフェレーラ選手に手も足もでなかったですね。決定的であったのは、錦織選手が左膝の故障を抱え、コーチにフォアハンドのエアケイを封印されていたことです。これではベスト8に進むことは難しい。次の全仏までに調整して欲しいと願っています。

 さてバイオです。

 主催者も380人も聴衆が押し寄せるとは思っていませんでした。
 先週の木曜日と金曜日(1月18日)、信濃町の慶応義塾大学北里記念医学図書館講堂で開催された「がんと代謝シンポジウム2013」のことです。割と地味なシンポジウムですから、私もまさか立ち見をするとは思いませんでした。2階席まで満杯に今年はなっておりました。

 この熱気は何かというと、抗がん剤の開発の焦点としてがん細胞の代謝が注目された結果です。我が国の製薬企業からの出席者が3分の1を占め、我が国の大手製薬企業は二桁台の社員を送り込んでいました。細胞ががん化すると好気的なTCAサイクルではなく、解糖系にエネルギー生産(ATP生産)の主流が変わる、ワールブルグ効果は90年前に発見されておりましたが、今や代謝産物の悉皆的な解析、メタボロームが可能となったため、具体的にがんと正常細胞ではどんなエネルギー代謝の変化が起こっているか?具体的に把握可能となったのです。加えて、代謝系酵素に焦点を当ててたんぱく質量の絶対定量も可能とするプロテオームも今では可能となりました。これによって代謝産物とそれを代謝する酵素分子の量が定量できるようになったのです。

 これはつまり、がん細胞の代謝に関しての数学的なシミュレーションモデルができることを示しています。これからはがん細胞の代謝系のダイナミックなシミュレーションモデルを見ながら、こことここの代謝経路をブロックすれば、このがんは治療できるといった、薬剤のレジュメンや新薬の設計ができることを意味しています。今回の研究会にわっと企業が押し寄せたのも、がんメタボローム創薬のまさに夜明けが2013年に始まるからであります。

 勿論、景気の良い話しには常に落ちがつきものです。今回の研究会の発表で明らかとなったのは解糖系の阻害剤を創れば全てのがんに効果がある治療薬は必ずしも開発できないということです。乳がんや大腸がんなど、組織系によってがん化による代謝経路の変更に多様性が存在するのです。また、過剰発現しているがん遺伝子の種類によっても代謝系は異なりました。MycとRasでは代謝系が異なっているのです。勿論、代謝経路にはいろいろな副経路もあり、解糖系をスパッと抑えればがん細胞が死滅するという保証もありません。今後、様々ながんによって、どの代謝経路が致命的なのか?粘り強く調べていく必要もあるでしょう。また、当然のことですが、がん組織には多様な変異を持つ多様ながん細胞によって構成されています。主要ながんがエネルギー生産を依存している経路を抑えたとしても、違う経路に異存している細胞が増殖を続けることにも、考慮を払わなくては無くてはなりません。今後はがんの代謝経路を標的とした併用療法がその鍵を握ると確信しています。

 90年前に報告されていながら、がんの治療法に応用できなかったワールブルグ効果を標的とした抗がん剤開発の波が我が国に波及して来ました。海外に比べて熱気が低かった日本の製薬企業もおっとり刀で参入してきたようです。メタボロームという国産の技術突破を、是非とも創薬につなげていただきたいと考えています。頑張って下さい。

 東京はまた雪のようですが、皆さん、どうぞお元気で。

日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満