新春展望2013、構造生命科学の国際的発展に向けて

(2013.01.02 21:00)
若槻壮市(スタンフォード大学教授)

 2013年は構造生命科学が大きく国際的に展開できる年となることを期待します。構造生命科学は、構造生物学が広くライフサイエンス研究分野との連携を図るために2年近くにわたって研究者コミュニティー、学術会議公開シンポジウム等で議論を経て提唱されたものです。それをもとに平成24年度から文部科学省「創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業」(http://pford.jp/、以下、創薬等PF)という事業が開始されるとともに、戦略目標「多様な疾病の新治療・予防法開発、食品安全性向上、環境改善等の産業利用に資する次世代構造生命科学による生命反応・相互作用分子機構の解明と予測をする技術の創出」が設定され、JSTにより「ライフサイエンスの革新を目指した構造生命科学と先端的基盤技術」研究領域が設けられました。

 創薬等PF事業の特徴は構造解析基盤技術を高度化、整備し、広くライフサイエンス研究者の研究支援を行うことをミッションとし、全国の大学、研究所から150人以上の研究者が参画し、解析、制御、情報の3拠点で構造生物学、創薬プロセス研究の高度化と支援を行います。

 一方、戦略目標の方は共通の研究領域名でCRESTとさきがけが同時に立ち上がり、田中啓二先生(東京都医学総合研究所所長)と私が研究総括として活動を開始しました。2013、2014年と後2回公募がありますので、興味のある方は是非応募をご検討ください。

 創薬等PF、「構造生命科学」戦略目標とも異分野連携を推奨しお互いの連携だけでなく、関連の新学術領域研究、「生命動態」研究領域等とも広く研究交流を図りたいと考えています。そこでは特に相関構造解析法という考え方を重視し、結晶構造解析、電子顕微鏡、分子イメージング、計算科学、バイオインフォマティクス、各種相互作用解析法等、様々な位置分解能、時間分解能(ダイナミクス)、天然度(in situ からin vivo)で構造機能解析を行う要素技術を組み合わせて重要な生命現象の階層構造ダイナミクスの解明を目指します。

 このような動向を国際的な連携にまで発展させることも検討しており、たとえば7月29日から8月1日にかけて札幌で北海道大学の前仲勝美教授を実行委員長として開催予定の国際構造ゲノム科学会議(http://www.c-linkage.co.jp/ICSG2013/index.html)では、構造ゲノム科学とライフサイエンスとのより密接な連携を目指して、「構造生命科学(Structural Life Science)」をテーマとして取り上げることにしました。

 一方、私自身は平成25年1月1日付けでスタンフォード大学が運営するSLAC国立加速器研究所(SLAC National Accelerator Laboratory)光科学部門とスタンフォード大学医学部構造生物学科に異動することになりました。翻訳後修飾と細胞内蛋白質輸送に関する構造生物学研究を継続するとともに、医学部、理学部、工学部等とSLACとの研究連携を強化し新たにSLAC生命科学部門の設立を目指します。また、SLACが世界に先駆けて開発したX線自由電子レーザー(XFEL)LCLSを用いてナノ結晶構造解析やバイオイメージングの開発も行います。

 上記創薬等PFの解析拠点代表、さきがけ「構造生命科学」研究総括については異動後も引き続き担当させていただく予定です。高エネ機構構造生物学研究センターについては、産業技術総合研究所・バイオメディシナル情報研究センターの主任研究員の千田俊哉博士が1月1日付けでセンター長・教授として着任されるとともに、創薬等PFの解析領域アドミニストレーターとして生産領域の高木淳一教授(大阪大学蛋白質研究所)、バイオインフォマティクス領域の清水謙多郎教授(東京大学農学系研究科)とともに解析拠点の運営で中心的な役割を担っていただくことになっています。

 SLACと高エネルギー加速器研究機構は30年にわたって、加速器をベースにした総合的な科学研究施設として協力関係にあります。今後はさらに広い加速器ベースのライフサイエンス研究ネットワークを構築し協力関係を築くことで、構造生命科学を展開する技術基盤の高度化と支援について国際的な展開を図っていきたいと考えています。また、創薬等支援技術基盤プラットフォームの推進におきましても基盤技術高度化と関連ライフサイエンス分野の研究推進で米国NIHの関連事業PSI-Biology等の協力関係を築き、国際的な新機軸の展開を目指したいと考えています。

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