新春展望2013、科学技術立国そして組換え作物・食品について考える

(2013.01.02 11:40)
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)代表 冨田房男

 私は、遺伝子組み換え作物が10年程前に実用化された時からこの問題に推進の方向で携わってきた。しかし、決して科学的根拠なしに、無条件に賛成なわけではない。この点では、慎重な推進者だと思っている。

 米国はもちろん、欧州食品安全機関(EFSA)のディレクターであるCatherine Geslain-Laneelle氏も、「EFSAが評価した全ての遺伝子組み換え生物(GMO)は安全である」と述べている。 すなわち、厳密な科学的な評価を受け、欧州で販売承認されたものは安全であると明確にしている。しかし政治的理由、今流行の言葉を使えば、ポピュリズムに押されたものと言えよう。EUですら、加盟の各国で対応策が異なっているのだから、日本では同様の対応がとられても当然だとも言える。しかし、北海道のような、農業が産業として大きな位置を占めるところが、条例で組み換え作物栽培の原則禁止を行うことは、私には、全くわからないことである。 

 最近、英国環境・食品・農村地域省(DEFRA)大臣が遺伝子組み換え作物の健康と環境に対する安全性を証明していることを考えれば、英国農業者が遺伝子組み換え作物の入手権を持つ必要がある。またさらに「EUの承認プロセスが過度に遅いことが、このテクノロジー分野での投資と技術革新を抑止している。我々は、EU体制がより効果的に運営され、GM作物の人類の健康と環境に対する潜在的効果を客観的評価するべきだ」との意見公表を行ったことは、北海道にそのまま当てはまることである。日本では、消費者の科学的根拠のない意見に飛びつく当選目当ての政治家が多いことに大いに懸念を感じている。科学立国という大きな国の旗印に背くものである。

 科学技術立国を我が国が掲げてしばらくになるが、その根幹の考え方が失われつつあることと軌道を同じをすると懸念している。科学技術立国の基盤は教育にあると思う。このところいじめ問題もあるが国民、特に若年層の科学の理解が乏しいことを憂うものである。これでは、いくら大学で頑張っても追いつかない。小中学校での教育があまりにもよくない。問題は先生方が教育以外に時間を取られ過ぎのように思う。これでは国民が正しくその行く末はもちろんそのあり方すら考えられなくなると思う。まだ確かに日本には国力(お金)があると思っている人々が多いようだが、それほど長くこの状態が続くと思われない。しっかりとした我が国のあり方を考える良い例が、「組み換え作物・食品について考えること」だと思う。

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